二十六 黎明
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要塞に医務室や治療室は必須。医務室の場所を口頭で伝える君麻呂の言葉にナルトは相槌を打った。同様に彼の話を香燐も耳を澄ませて聞いている。
「……危ないのか」
「かなり切迫した状態です」
廊下を走りながら、俯き加減に思案する。ナルトの答えを君麻呂と香燐は黙って待っていた。ややあって「香燐」とナルトが呼ぶ。
「隠し部屋の場所、憶えているか?悪いけどあそこから医療関係の資料全部、医務室の前に持って来て」
「ぜ、全部か!?」
思わず声を荒げる香燐に、ナルトは静かに頷いた。ナルトを挟んで走っている君麻呂が首を傾げる。
「もっともかぐや一族に関しての資料があれば、見つけ次第報告してくれ」
はっと反応する君麻呂を余所に、香燐は渋々頷くと途中で二人と別れた。物言いたげにする君麻呂に視線で『後で』と伝えるとナルトは神農を抱え直す。そして君麻呂の案内で村人達の許へ向かった。
薄暗い遺跡の中で村人達は光を求め、右往左往していた。複雑極まりない遺跡の構造に戸惑い、困惑する。迷宮を彷徨って、ようやく彼らは外から射し込む光を見つけた。出口だ。
我先にと競って走り出す。放置してきた病気の少女のことなど彼らの頭にはとうに抜けていた。あるのはただ助かったという安堵だけ。
だが出口に辿り着くその瞬間、急激に堰き止められる人の雪崩。前方の光の中にぼんやりとした人影が映り込んでいた。
まるで催眠術にでも掛けられたように、その青い双眸から目が離せない。影がゆらりと蠢き、指をぱちんと鳴らした。同時に村人達の目の前で、パチンッと何かが炸裂する。
気がつくと彼らは村の傍にある遺跡の前でたむろしていた。自分達がなぜこんな所に集まっているのか、村人達には皆目見当がつかなかった。思い出そうとしても記憶は空白で、何も書き連ねていない。
そしてなぜか気を失っている見知らぬ老人の姿に、彼らは首を傾げたのであった。
神農に関してと村が焼けてからの記憶を、術で村人の頭から綺麗に抜き取る。多少疲れている様子のナルトを君麻呂は気遣わしげに見つめた。その視線に気づき、うっすら微笑を浮かべるナルト。だがその眼は「話は後だ」と、君麻呂の質疑を許さなかった。
医務室に足を踏み入れると、まず耳に入ったのは如何にも苦しげな呼吸。
寝台に寝かされている赤髪の少女を見て、ナルトはまるで自身が病気に侵されているかのように痛ましげな顔つきをした。
香燐が運んで来た、世界各地の巻物や資料。医務室の前にこれでもかと積み上げられたそれらを手に取り、パララ…と流し読む。最初に何冊か目星をつけていたために、目的のものはすぐに見つかった。その知識を頭に叩き込み、医務室に戻ろうとする。その寸前で香燐はナルトの腕を取って引き戻した。
「どうするんだ?」
「治療す
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