二十六 黎明
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はついたようだな、と香燐は思った。ナルトを呼ぼうと口を開きかける。だが彼女が声を発するより先に、零尾から眩い光が閃いた。
かと思えば、次の瞬間には零尾の姿が跡形も無く消えている。いるのは倒れ伏している神農と、床に打ち捨てられていた羽織を拾い上げるナルト。だが彼が白き羽織を翻した刹那、その背中に今まで無かったであろう円環の紋様が施されているのが香燐の視界の端に映った。
(まさか……)
「ダーリ……」
「ナルト様!ご無事ですか!?」
しかしながら香燐の言葉は、突如現れた君麻呂に一瞬で断ち切られた。
何時の間に来たのか。香燐の隣に来ていた君麻呂は、ひょいっとその身を空に踊らせる。すぐさまナルトの許へ駆け寄っていく彼を追うように、香燐もまた、慌ててナルト目掛けて飛躍した。
「君麻呂、お疲れ様。大丈夫?」
「はい。ナルト様こそお怪我は…?」
開口一番に互いを気遣う二人の間に割り込む。わざとらしく足音を大きく立て、香燐は彼らの意識を自身へと向けさせた。
「ダーリン。さっき……」
気に掛かっている事柄を質問する。だがナルトは静かに人差し指を唇に当て、声には出さずにしーっと嗜めた。それだけで赤面した香燐は、口を噤んでしまう。
「ナルト様。この者は…?」
香燐を余所に、君麻呂はナルトの足下で倒れている神農に目を向けた。気絶していると理解しつつも、警戒は緩めない。さりげなく背に庇おうとする彼に、ナルトは苦笑を返した。
「もう警戒する必要はないよ」
「どういうことだ?」
ようやく我に返った香燐が火照った顔を冷ますように手で仰ぎながら訊いた。真上から覗き込んでいても、神農が突然倒れた理由が理解出来なかったのだ。だがナルトはそれには答えず、神農のぐったりした身体をひょいと担ぎ上げる。手伝いを申し出る君麻呂を手振りで抑え、そのまま軽く床を蹴った。
促されるままに君麻呂と香燐もまた、再び正方形の出入り口へ舞い戻る。そしてもはや石盤を振り返ろうともせず、三人はその場を足早に立ち去っていった。
「空忍なのですが」
中枢から放射線状に伸びる通路。その迷路にも似た路の一つを迷いなく突っ切る。一度も足を緩めずに走りながら、君麻呂が口火を切った。
「粗方この砦からは追い払いましたが、おそらく近辺で潜伏している残党は多いと思われます……根絶やしにしますか?」
「いや、」
君麻呂の案を却下して、ナルトは小さくかぶりを振った。話題を変える。
「それより村人はどうなった?」
「一応要塞の出入り口付近に集まるよう誘導しました。ただ……」
言い淀んだ君麻呂の話の先をナルトは視線で促した。暫し黙していた君麻呂だが、やがて口を開く。
「…一人、重症な病人がいまして。彼女だけは医務室で寝かしておきましたが…」
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