二十六 黎明
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巻物ばかりに夢中になって、それ以外はすっかり忘れていたのだ。
ならば最初から思い違いさえしなければナルトと争わずに済んだかと言えば、それはないだろう。遅かれ早かれ神農は誰かに追い詰められ、そしてその生涯を終えていた。それがナルトと会った事で早まったに過ぎない。だがそうとは気づかず、神農は一気に脱力した。
暫しその場に根が生えたように硬直する。やがて気を取り直したように彼は「…なら取引といかないか?」と愛想笑いを浮かべた。
「その一族に関しての資料を全て君に提供する。その代わり…」
「黎明を寄越せ、と?」
ナルトがそう答えるなり、零尾は彼の後ろに隠れた。唸り声を上げ、神農を威嚇している。その様子をちらりと見て、ナルトは神農に顔を向けた。
「断る。それにもうこの要塞の要所は押さえてあると言っただろう。のんびり捜すさ」
「わししか知らない場所だ。容易には見つけられない」
軽く却下したナルトの足に神農は追いすがった。既に立ち上がれないほど弱まった彼は、訴えるような眼差しで彼を見上げる。だがナルトはそれを無情にも一蹴した。
「大方見当はついている。先ほどまでいたあの広間。無線機やレバーがあった、あの石柱だろう?」
ナルトの言葉に、神農は内心歓喜に打ち震えた。まだ自分の運は尽きていなかったようだ。挽回のチャンスはある。にんまりと口角が上がりそうになるのを耐え、彼は「そうかね?」と努めてさりげない態度を装った。
(石柱に無い…という事は、あの隠し部屋か)
しかしながら神農の思案は、ナルトにはバレバレであった。神農はナルトの話術にまたしても引っ掛かってしまったのだ。
もう聞き出す事は全て聞き出した。後は……。
「黎明」
ナルトの声に従い、零尾がずるりと身を引き摺った。神農の引き攣った顔を覗き込む。青褪めた彼がまたもやナルトに追いすがろうと手を伸ばした。だがそれは虚しく空を切り、力無く項垂れる。
身体から何かが抜け出すのを感じる。意識は霞がかったものになってゆき、思考力も曖昧なものになっていった。ぼんやりとする意思に、あやふやとなる感情。必死に理性の糸を手繰り寄せるが、ついには全く働かなくなる頭脳。考えるという行為さえも放棄する。
すると、今まで自分が思い描いていた野望や悪行がどうでもよくなり、代わりに罪悪感が押し寄せてきた。
心が痛い。ほんの少し前までは一片の良心すら持ち合わせていなかった。それが今や、己の業に苛まされている。正気を保とうとするが、やがて罪の意識に耐え切れなくなって彼は気を失った。
意識を手放し、横たわる神農。彼をナルトは静かに見下ろす。そして。
「残念ながら貴方の持ち札は、もう一枚も残っていないんだよ」と空しく囁いた。
崩れ落ちた神農を遠目に捉え、決着
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