二十六 黎明
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静かに射抜いていた。こちらに向けているのは片目だけだというのに、全身の震えが止まらない。冴え冴えとした視線は神農の心臓を確かに凍りつかせていた。
いつも冷静沈着のナルトが怒っている。だが何が彼の怒りを買ったのか、神農には理解出来なかった。
「化け物じゃない」
だしぬけにナルトは呟く。押し殺したような、低い声音だった。
「零尾でもない―――『黎明(れいめい)』だ」
聞き慣れぬ単語に逸早く反応する。殺気を抑えたナルトが零尾に顔を向けた。神農に向けていた顔とは打って変わって、穏やかな表情を浮かべる。
「馬鹿なことを…。化け物に名前など必要ないだろうに」
息も絶え絶えに神農は皮肉を告げた。曖昧ながら事情を察し、無駄な事を、と嘲笑う。
ナルトは彼に視線すら寄越さず、冷たく言い返した。
「必要だ。草も木も動物もこの世に生きるもの全てが名を持っている。どうして必要ないと言い切れる?それは差別だよ」
「化け物と人は違う」
「同じだよ――――いいや、人のほうが残酷な生き物かもね」
そう言い放ってから、思い出したように「貴方もそういう考えなんだろう」と付け加える。寸前までの冷然とした様子はない。いつもと同じ、屹然とした風情で、ナルトは神農を見据えた。
最初に『人は残酷な生き物』と口にした神農が忌々しげに舌打ちする。そして慌ててナルトの背後にいる零尾を窺った。
襲ってくる気配がない事を確認すると、先ほどまで諦めていた生への執着がむくむくと頭を擡げてくる。ゆっくりと後ずさる神農に、ナルトが突然「さて」と口を開いた。
「巻物は何処だ?」
詰問してくるナルトを、神農は鼻で笑った。
「てめえも所詮、わしと同じ穴の狢よ。零尾を手中にし、世界を我が物にするのが目的なんだろ?それとも何か?零尾の巻物を他国にでも売りつけようって魂胆か…」
ナルトの顔に浮かんだ当惑の表情を見て、神農は言葉を切る。こてんと首を傾げ、「なにか勘違いしてるんじゃないか?」とナルトは不思議そうに目を瞬かせた。
「俺がいつ、黎明の巻物が欲しいと言った?」
既に零尾の事を『黎明』と呼びながら、ナルトは何気なく後退した。零尾の隣に立つ。
「かぐや一族の病歴や治療データ…それに関する巻物は何処だ、と訊いているんだ」
「……はぁッ?」
「木ノ葉から強奪したのは黎明の巻物だけじゃないだろう。その中にあるはずだ」
数回瞬きをした後、神農は改めてナルトをまじまじと見つめた。そしてナルトの言動を思い返す。そういえば巻物とは言ったものの、『零尾』だとは一言も口にしなかった。勝手に神農が解釈し、思い込んだだけだったのである。
自分の思い違いだった事に神農はようやく気づいた。確かに木ノ葉から零尾関連の巻物以外に重要そうな物も頂いてきた。だがようやく見つけた
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