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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六話 掣肘
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った。

「国防委員長、如何かな?」
「何をかね?」
気の無さそうなトリューニヒトの返事にバラースが全身に力を入れるのが分かった。激発を堪えた、そんなところか。しかしな、この程度の挑発に乗ってどうする、阿呆。

「軍の基本方針を変えてはどうかと……」
「却下だな」
「しかし……」
バラースは最後まで言えなかった。トリューニヒトに睨みつけられて口籠っている。

「却下だ」
「……」
「二十万隻もの大軍なのだぞ、一旦決めた基本方針を簡単に変えられては軍が混乱する。少し考えて口を開いて欲しいな」
バラースの顔が紅潮している。馬鹿扱いされて屈辱を感じたのだろう。しかしな、トリューニヒトに好意を持たないターレル副議長兼国務委員長、ボローン法秩序委員長もお前に同調しない。馬鹿扱いされても仕方が無いだろう。

「しかし、人道的な見地からあの様な蛮行は……」
「フェザーンの事はボルテックに任せればいい。安っぽいヒューマニズムを振りかざすのは止めてくれないか、バラース委員長。我々は勝たなければならないんだ。それにあそこは地球教の根拠地だ、甘く見るのは危険だ」
「……」
ウンザリした様な口調で遮るとバラースの顔が強張った。皆気付いていないようだがサンフォードは不機嫌そうにしている。思うようにいかない、そんなところか。

「攻め込んで待ち伏せされていたらどうする。大変な損害を受けるぞ。君はその危険性を考えているのか?」
「……しかしフェザーンを助ければ経済面での利得は計り知れない。人道だけじゃない、実利も有るだろう」
バラースの言葉にサンフォードが微かに頷いた、微かにだ。

「議長閣下も同意見ですか?」
トリューニヒトが幾分丁重な口調で問い掛けた。サンフォードが目をキョロキョロしている。積極的に自分から火の粉を被ろうとはしない男だ。火の粉がかかりそうで慌てているらしい。
「頷いておいででしたが?」
トリューニヒトも見ていたようだ。意地悪く指摘した。

「そんな事は無い。確かに軍の方針を変えるのは大変かもしれないがバラース君の意見にも一理あるのではないかね。検討の余地は有ると思うが……」
苦労しているな、そんな言い方で中立を保ったつもりか? 決定的な言質を与えず望みの方向に誘導する。まるでフェザーンだな、議長。おまけに地球教の脅威については全くの無視か。何を考えている! 

「フェザーンを甘く見てもらっては困りますな」
トリューニヒトが言うとサンフォード議長は居心地が悪そうに身動ぎした。標的はバラースから議長になった。ホアンが微かに笑みを浮かべている。結末は見えた。
「貴族連合軍とフェザーンが組んでいるとは御考えにならないのですか?」
誰かが“組んでいる?”と呟いた。皆は顔を見合わせている。

「あの放送は
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