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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六話 掣肘
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の軍への介入は現場を混乱させるだけですよ。勝てるものも勝てなくなります、そうなれば同盟の存続にも大きな影響が出るでしょう」
トリューニヒト国防委員長が頷きました。
『君の言う通りだ、最高評議会できちんと釘を刺しておこう』
「宜しくお願いします」
『他のメンバーにも相談しておくよ。協力してくれるだろう』
「……」
『正念場だね、ヴァレンシュタイン中将』
「そうですね、期待しております」
う、怖いです。二人とも口元に笑みが有るのに目は笑っていません。肉食獣が獲物を見つけた様な目です。
通信が終わると総司令官代理は“少し自室に戻ります”と言って艦橋を後にしました。
「昨日もこの時間に部屋に戻ったな」
「一昨日もですよ、デッシュ大佐」
ラップ少佐の言葉に皆が何とも言えない様な表情をしました。何処かに連絡でもしてるのかしら……。直ぐにコソコソし始めるんだから。また何か考えているんだわ、きっと。
宇宙歴 795年 12月30日 最高評議会ビル ジョアン・レベロ
そろそろ宇宙歴七百九十五年も終わる。今年もこれまで通り戦争で始まって戦争で終わる一年になりそうだ。だが例年とは違うところも有る。帝国との和平、戦争の終結が見え始めている。来年は良い年にしたいものだ。そんな事を考えていると情報交通委員長シャルル・バラースがフェザーンの事を話し始めた。
「フェザーンは随分と酷い事になっているようだが」
チラ、チラとサンフォード議長に視線を向けながら話す、どうやら議長から命じられたらしい。もっともバラース本人もフェザーンから金を受け取っている、議長に頼まれなくても動いたかもしれん。或いはボルテックがせっついたかな、奴もフェザーンが占領されては必至だろう。
「確かに酷いな。略奪、暴行、殺人か……、貴族連合軍はならず者の集まりだな、あれで軍と言えるのかね」
「貴族達の私兵だからな、正規軍じゃない。統制は緩いのだろう、そういう軍は始末が悪いよ」
マクワイヤー天然資源委員長とトレル経済開発委員長の言葉に皆が頷いた。
「このままで良いのかな?」
「……」
「フェザーンに軍を送り貴族連合軍を追い払うべきじゃないか? そうすればフェザーンも同盟に感謝するだろう。色々とやり易くなると思うんだが」
バラースの言葉に皆が顔を見合わせた。
「それは同盟領へ引き摺りこんで迎撃するという基本方針を変更するという事かな」
「そういう事になるかな」
バラースがラウド地域社会開発委員長の問いに答えると皆がトリューニヒトに視線を向けた。だがトリューニヒトは無言だ、まるで関心を示さない。サンフォード議長が面白くなさそうな表情をしている。バラースは面子を潰されたと思ったのだろう、トリューニヒトに向ける視線が鋭くな
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