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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六話 掣肘
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うな口調です。明らかに怒っている。
「もちろん理解しています。ですからフェザーン人の事よりも同盟市民の事を考えるべきだと申し上げているのです。お分かりいただけましたか?」
『……』

あ、議長のこめかみがピクピクしてるように見えるんですけど錯覚? 錯覚よね、映りが悪いんだわ。艦橋の総司令部要員は皆気まずそうな表情をしています。大丈夫、気にしない、気にしない。総司令官代理を見習いなさい、世の中には何の問題も無いような顔をしているから。実際問題は無いんだろうな、彼にとっては……。

「議長閣下は軍をフェザーンに攻め込ませたい意向をお持ちなのですか?」
『……そうは言っていない』
「安心しました。念のため忠告致しますが攻め込んで負けたりすると政府の支持率が下がるのは間違いありません。口出しはお止めになった方が宜しいかと思いますよ。議長閣下の命令で攻め込んで大敗などしたら閣下の進退問題にまで発展するでしょう」
心配そうな口調ですけど火に油を注いでいるような……。あ、ピクピクがはっきり見えました。映りが悪いんじゃないようです。

「トリューニヒト国防委員長からは政府は軍の作戦に口出しはしない、その事は最高評議会で確認したと伺っております。閣下、軽率とも取られかねない行動は御慎み下さい……」
『……』
「御用が無ければ小官は忙しいのでこれで失礼させていただきます」
総司令官代理がオペレーターに“切りなさい”と命じました。オペレーター達が顔を見合わせている間に通信が切れました。議長が切ったのでしょう、“不愉快な”と吐き捨てる声がしましたから。

皆、顔を見合わせています。最高評議会議長を怒らせてしまったけど良いのかな、そんな感じです。でも軍の作戦に口を出すなと言うのは正しいでしょう。基本方針は≪貴族連合を同盟領に引き寄せ迎撃する≫で決まっているのです。細部は軍人に任せるべきです。総司令官代理がトリューニヒト国防委員長への通信を命じました。クレームかな。

『どうしたのかね、ヴァレンシュタイン中将』
相変らず格好良いです、トリューニヒト国防委員長。スマートで女性層に人気が有るのも分かるなあ、私の母もフアンです。でも声はシトレ元帥の方が渋くて素敵です。
「今、サンフォード最高評議会議長から通信が有りました」
国防委員長の表情が厳しくなりました。
『それで、サンフォード議長は何と?』

「露骨には言いませんでしたがフェザーンに攻め込ませたかったようですね」
『そうか……』
「基本方針に変化が有ったのですか?」
総司令官代理の問い掛けにトリューニヒト国防委員長が片眉を僅かに上げました。
『いや、変化は無い。同盟領に引き摺り込んでの迎撃だ』

「困りますね、基本方針を無視して政治家達が恣意的に軍に圧力をかけるのは。これ以上
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