八章 幕間劇
仕合×治療
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俺は言われた通りに手を握り、指の側が麦穂に見えるように軽く持ち上げた。すると麦穂も同じようにして握った拳を俺に見えるようにした。
「それで私が『せーの』と声をかけますので、指を一本立ててみてください」
「指を?分かった」
「ではいきますよ?せーの」
声に合わせて俺は人差し指を持ち上げる。それと同時に麦穂も人差し指を上げていた。同時ではないな、俺が上げる前には麦穂が先に上げていた。
「ん?どういう事だ」
「もう一度やってみますか?せーの」
と何度もやってみるが、俺より早く指を上げていた。
「それはあれか?気配で分かったのか」
「はい。今ので言えば、実際に一真様の指が動くより先に、動こうとする気配のようなものを感じて、それに合わせて私も指を上げてみせただけです」
「つまり、ほんの少し先の動きを読む、という事か。名前はあるのか?壬月の五臓六腑みたいに」
「私のは闇夜灯明と言います」
「へえー、それでも十分な技だと俺は思うな」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」
と言って、俺に身体を見るようにするが怪我はないので今度は壬月の番だが。麦穂は次はと言いかけたら、不機嫌な顔になった。
「そう言わずに。全身に風の刃を喰らったのですから、顔や手や腕に切り傷がありますよ」
「こんなもの唾でもつけておけばすぐに治るわ」
「駄目です。壬月様はそう言っていつも放っておくじゃないですか」
「麦穂よ。壬月の様子が変わったが、どうかしたのか?」
「ああ、壬月様は薬が苦手なんですよ」
「麦穂!」
「何です?本当の事を言っただけじゃないですか。怪我そのものではなく薬を塗られて染みる事に怯えるだ何て、どうしてこんな方が鬼柴田と呼ばれて恐れられているのか不思議で仕方ありませんね」
「くっ・・・・麦穂、貴様・・・・」
ああ、なるほどね。薬が染みるから嫌なのか。まあたまにいるよな、鬼軍曹な教官だったとしても注射器をする時は怖がる人みたいな感じか。からかうような麦穂の言葉に、壬月は怒気をみなぎるが全然怖くない。で、麦穂の手には薬の容器があるのを見て、悔しそうに後ずさりする。
「ええい、とにかく手当てなどいらんと言ったらいらんのだ!」
壬月はそう叫ぶと、踵を返して一目散に逃げようとするが、しかし。
「えいっ」
壬月が踏み出した最初の第一歩が地面に着く直前、麦穂が抜いた刀の先で、その足を払いのける。まあ俺がやってもよかったんだけどね。風で捕まえるとか地の力を使って壁を作るとか。
「うお!?」
地面に着くべき足が跳ね上げられ、バランスを崩した壬月はなすすべなく転んでしまった。
「感情的になっている時は動きが読
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