幕間+アリッサ:妖精の慰み ※エロ注意
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し、盗りやしませんよ。懐はもう『温かい』ので」
ぽんぽんと、脚絆のポケットを叩くと小気味よい金属音が鳴った。本職を忘れぬ殊勝な心は流石というべきか。逮捕されて罰を受けても懲りる事は無いだろう。アリッサは嘆息を零してしまった。
「そうだ」と、パウリナは思い出したように背負っていた駕籠を床に下ろした。
「静養中って御話でしたよね?だから今日はですね、折角だからアリッサさんに料理を作ってあげようと思いまして。御主人と相談して、ほら!素材もこんなに!」
駕籠を覗き込むと、出るわ出るわ、王都の高級市場で売られる色とりどりの野菜たち。アリッサは好物である二十日大根が入っていたことに一先ず喜び、見た事もない紫色の丸い野菜に不安を抱く。
「そんなに沢山も要るのか?何だか、凄い色をしたものが入っているが」
「あっ、この紫色のヤツですか?私もなんだかわかりません!面白かったのでつい買っちゃいました!」
「私は毒見係か?」
「ちなみにお金はキーラちゃんの奢りです」
「男爵家の教育方針はどうなっているんだ?おい、まさかお前が料理をするんじゃないだろうな?」
「いいから任せて下さいって。リタさんにレシピを渡されたんで、その通りに作れば大丈夫です!あの人の郷土料理らしいですから、間違って作っても不味くはなりませんって。
ささ、料理の過程を見られちゃ愉しみが減っちゃいま。出来たら合図をするんで、それまでその辺をブラブラしてて下さい。どうせ引きこもってばかりだったんでしょう?」
「なんなんだお前は?押しかけてきてこの仕打ちは?これでも傷心中なんだぞ!」
「いいからさっさと行く!じゃっ、ちょっとキッチン借りますね」
暴風に吹き飛ばされるかのようにアリッサはロッジを叩きだされた。我が物顔で女盗賊は戸を閉める。アリッサは半ば呆然としてロッジを見遣り、「しょうがない奴ね」と零しながら大人しく散策を始めていくーーなんだかロッジから視線を感じるようで落ち着けなかったのも一因であるーー。
少し柔らかな地面を踏みながら青々とした草木の傍を通り、ざわざわと梢が囁くのを横目に、清らかな空気を肺に取り込んでいく。木葉を縫って注ぐ陽光を踏むのは解放的な遊戯だ。そして木の根に咲いた桃色の花弁に視線がいってしまうのはオアシスを求める心の気紛れだ。歩くだけでも心が癒されていくようでもあったが、それだけに自然の癒しは留まらない。散策を始めてから数分で、アリッサは幸運を感じる事となった。
草むらを分け入って林道に姿を現したのは、白い毛並みをした動物だ。一見リスのようにも思われたが鼻から伸びる白髭や歯が大きい事からネズミに近い動物だという事が分かる。焦げ茶色の瞳をきょろりとさせながら木の実を齧る姿に、きゅんと、アリッサの心はときめいた。
「あっ、可愛い」
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