暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:妖精の慰み ※エロ注意
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い」と使用人の一人は言った。だがアリッサのお気に入りは、ロッジに設置されたウッドデッキであった。
 そして彼女はここに来るに至った理由について思いを巡らせる。

「ケイタク、だよな」

 ごろりとデッキを横になりながら、そう呟いた。飄々として、やる時はそれなりに男らしさを露わとさせる異界からの若人。脳裏を過ぎるその笑顔が心に俄かに波を立たせた。
 さらにもう一つの不穏な波が彼女の心中にある。王女との間に生じてしまった深い溝であった。これまでの人生で彼女とこのように対立した事は無い。子供同士が我儘と言いつけとの間で攻防するのとは訳が違った。ここでどのような時間を送ればいいのだろうかとアリッサは考えを巡らそうとするも、その度に轟々とした剣戟の響きや余計な事が脳裏をリフレインしている。その煩わしさたるや雑音の交響楽団ともいうべきであろう。

「駄目だ駄目だ。寝ないといかん!」

 ぎゅっと目を閉じて、アリッサは心中の穏やかならぬ波長を拒まんとする。しかし彼女の想いは虚しく、蟠りのようなものが胸を支配していた。
 静養開始から五日目。何もない日常に転機が訪れる。朝食の柔らかな白パンを食べてリラックスしていた所を、全くの予告なしに来訪者が訪れたのだ。流れるような銀髪と愛くるしい猫の瞳をした女盗賊。春の温かさの御蔭ですっかりと露出度の高い恰好ーー臍・脛を出した黒い服装ーーにイメージチェンジした、パウリナであった。
 アリッサはウッドデッキから起き上がって驚く。よく自分がここにいるのが分かったな、と。「目立つところに建物がありましたすぐに分かりましたよ」と返された。そういう問題だろうか。

「目立つとは何だ、目立つとは。渓谷に挟まれた秘境がお前にとっては目立つような場所なのか、パウリナ」
「まぁ、そうともいいますね。こういう場所って貴族や金持ちの御偉方が好きそうな所だって誰だって勘づきます。だから真新しい馬車の轍を見付けたときは、『あっ、これだ!』ってわかりましたよ。宮廷の警備兵がいたのが更に分かりやすかったですね」
「そういえばお前って、元盗賊だったな。すっかり忘れていた」
「それにしても、いやぁ、良い所ですね!財貨を隠すにはうってつけの隠れ家です。私にとっちゃあぁ、盗んでくれと言ってるようなもんですけどね!
 あっ、ここまで来るのにも結構苦労しましたよ?さっき言いましたけど警備兵がいましたからね。でもね、御主人が教えてくれた登山術の御蔭でスイスイと、こう山羊みたいにね、安全な場所を登ってきてーーー」
「要するに、お前は私有地への不法侵入を犯したわけだ。列記とした犯罪行為だ。今回は見逃してやるが、仮に『此処』で手癖の悪さを働かせてみろ。騎士として相応の態度をもってお前を歓迎してやろう」
「冗談ですって。王族のモノなんて興味無いです
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