第四話
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
鼠のアルゴ。そして黒服の情報屋、シド。
路地での会話を終えた二人は俺の心からの願いが通じたのか、『圏外』へと向かってくれた。
……まあ。
「なぁ、あそこまでしなくても……」
「当然の処理よ。それとも何? 大事にとっておきたかったの?」
「……いいえ、そんなことはございません」
若干遅かったことは否めないが。
断っておくが、俺はアルゴのパンチラ……もとい、転倒シーンを撮影などはしていない。シドからの唐突なメッセージによって反射的に『映像結晶』を取り出してしまいこそしたが、それを咄嗟に撮影へと使えるほどに盗撮に慣れてはいない。結論、アレは何も映っていない、いわばカラの結晶だった。
のだが。
「ならいいじゃない。なんだったら結晶代も払いましょうか?」
「いや、そこまでは……」
アスナはそんな俺の弁解を一切信用せずに即座に腰の細剣を抜き放ち、文字通り結晶を一刀両断してしまったのだ。彼女が女子高育ちのお嬢様であり、そういう方面に対して純粋培養で潔癖であることは知っていたが、それを今回再び身を以て知ったわけだ。
まあ、いい。もう済んだことだ。
いや、アスナの視線の温度が二、三度下がった感覚があるが、それも仕方ない。
目下大切なのは。
「それにしてもあの二人……こんな場所に何の用があるんだ?」
「私に聞かれても分かるわけないでしょ」
アルゴとシド、二人の目的地だ。
今二人が……つまりはそれを尾行する自分たちがいるのは、中層エリアのなんの変哲もない森林エリア。ダンジョンですらない上になんらかのクエストなどが発生したとも聞かない有象無象のひとつにすぎないそこは、鬱蒼とした木々や腰や肩ほどの茂みが多くて視界が悪く、Mobのポップも少ないとは言えない。
まあそのおかげで至る所でハイディングボーナスがあるために非常に《隠蔽》がしやすく、スキルがないアスナまでついてこれているわけだが。いや、これは「おかげ」ではなく「せい」か。
「でも、ほんとになんにもないところね……キミはなにかここ知ってる?」
「知ってるどころか来たのも初めてだよ。……まあ俺が知らないってだけであの二人ならなにか新しい情報を掴んでる、って可能性も十分あるけどな」
とにかく、二人を見失わないように、また気取られないように。
今はつかず離れずで尾行するしかなかった。
(……ああ、くそっ……)
ここまできたらもう、なるようになれだ。今日は盗撮は諦めて、とにかくアスナの疑惑を解く、それを第一目標に動くしかない。あの変態も明確に期限を切ってはいなかったし、まさか一日失敗しただけであの写真がばらまかれたりはしないだろう。
だから。
(……あんま
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ