第四話
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「え、私もですか? あ、ありがとうございます」
狼狽えるアスナをよそに、不機嫌を隠さずにシドからの報酬を受け取る。結構な金額に加えて「アルゴの秘蔵写真集かっこはーと」なるものが交換ストレージに表示されていたが、完全に無視して交換許可をクリックする。もうなんというか、いい加減免疫ができていた。
「もちろんアーちゃんにもサ。しっかり護衛の役を果たしてくれたしナ。……キー坊は詳しく説明してくれなかったのカ?」
「……ああ、ちょっとな」
ニヤニヤ笑いのアルゴをバッサリと切って、そのまま身を翻す。
なんていうか、もうひどく疲れ果てていた。いろんな意味で。
疲れすぎて、今日はぐっすり眠れそうだった。
と。
「おっと、忘れ物だぜ、キリト。ほらっ!」
「ん……ああ……」
シドの声に振り返ると、一つの映像結晶が放り投げられていた。
言うまでもない。そこにあるのは、あられもないアスナの姿の映されたものだ。俺を今日一日まるまる煩悩の渦中に叩き落としたその元凶たる白い悪魔が映し出された、そんな映像結晶。それに対する感情は、一週回ってなんだか清々しい気分だった。
「よっと!」
だから俺は、それを受け取らない。
背中の剣を抜き放って、そのままソードスキルを放つ。《スラント》の単発のナナメ斬りが、その結晶……おそらくこのアインクラッド内で限りなく高い需要のあるその映像を映したそれを、真っ二つに切り砕く。
シドが、にやりと笑う。
アルゴも、にやりと笑う。
そんな二人に心の中で全身全霊で中指を突き立てておく。
俺はこの日、男として少しだけ成長して、ついでに一つ学んだ。
―――デスゲームだからって、年中真面目でいられるわけじゃない。
◆
ちなみに、後日談。
こうして俺の長い一日は終わり、秘宝、『閃光@宙吊りなう』は永遠に葬り去られた。
だが、俺は一つのことを失念していた。
「うあああ! 俺のぶん!」
その後アインクラッドに数個の映像結晶……『黒の剣士@宙吊りなう』が記録されたそれが出回った。のちのちプレミアがついてそうとうのもうけになった、とアルゴとシドから知らされたときは、本気で剣を抜き放つところだったのをここに記しておく。
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