第四話
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いたせいで、反応が遅れてしまった。
アスナの小さくて鋭い声は、Mobのポップに対してだった。本来は周辺哨戒は《索敵》のアビリティを持つ俺の仕事なのだが、アスナもしっかりと気を払ってくれていたらしい。のっしのっしと横に現れたのは、軽く二メートルを超えそうな巨体の大熊。レベルこそ俺達の敵ではないが、この場でこいつを倒せばその体に見合ったポリゴン片が光ることになる。
「あ、う……」
「しぃっ! 《隠蔽》が弱まるでしょ!」
だからここは、隠れるのが最善。
「っ、っ……」
「静かにってば……!」
……なのだが。
(……今日は、今日だけは許してくれ……!)
そのためには、《隠蔽》のスキルの無いアスナはなんらかの方法でその手段を確保する必要がある。……たとえば、俺のコートの中に入って、《隠蔽》のボーナスを得る、とか。
分かっている。
彼女に他意がないことは分かっている。もちろん切羽詰った状況であれば俺だってアスナの体を隠すことに(抵抗はないわけじゃないが)躊躇いはしないだろう。だが、それでも。それでも今、ピンク色の思考が脳裏にめぐる今だけは、それはひどく俺には毒だった。
「ふぅ、やり過ごせたね……って、キリト君?」
「……」
「ちょっと、おーい」
ふわっとしたような、ふにっとしたような感覚。それはあの魅惑の布地に包まれたその体であり、そこにはもしかしたらあの変態の店にあったようなそんなこんながあるのだ。それがいままさに俺に密着している……あまつさえ、俺の顔を見上げて、じゃない!
違う違う、違うんだ!
「……いや、なんでもない。……追いかけよう」
違わないけど!
「……う、うん……」
だんだんと頭が朦朧としてくるのを必死でこらえつつ、平静を装ってアスナへと告げる。表情はもはや百面相を通り越して無表情な能面のようになりつつあったが、それを意識する余裕など今の俺にありはしない。その顔にアスナが何を感じたのか、二、三歩すすっと離れる。
ひかれたことに若干傷つくが、それ以上に安心する。
アスナの危機察知能力に、心の中で感謝だ。
だが。
「……じゃ、じゃあ、きゃああっ!!?」
そんな思いは、一瞬で泡と消えた。
「うワっ!!?」
「うおっっ!!?」
前から聞こえた、二人の悲鳴とともに。
◆
その当時はまだ犯罪者……オレンジプレイヤーたちの間で『罠を仕掛ける』という発想があまり流行していなかった。必然それは一般プレイヤーたちの間にその対処法が流布されていなかったということを示す。
俺達は尾行に必死になっていたせいで気づかなかったが、アルゴ達は森をぐるぐると回るよ
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