第四話
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り、くっつかないでくれよ……これ以上俺を無意識に誘惑しないでくれ!)
密着するアスナに無言の抗議を心中でしつつ、なんとか俺は自制心を保ち続けた。
◆
ここまでキリトの行動を俯瞰してみた者がいたとすれば、十人が十人「彼はまともな精神状態ではなかった」ということに同意していただけるだろう。だから彼が今この状況で、《索敵》をまともに働かせられなかったことを責めるのは酷だろう。
そう、彼は、気づかなかった。
Mobではない。
いくら彼が冷静でなくても、知能も知性もない獣のMob程度であればその気配を察知することはできる。
だからそれは、知性ある存在。
知性があり、そして、悪意がある存在。
彼はまだ、その気配を察知できていない。
◆
「っ……!」
アスナの無音の気合とともに、鋭い刺突が繰り出される。
必要最小限の威力と衝撃の一撃は、モンスターを一瞬でごく僅かなポリゴン片へと変えた。
と、同時に。
「……っと……っ! 今の気づかれてない?」
「……大丈夫だ、二人とも気づいていないみたいだ」
尾行するアルゴ、シドの二人の様子を窺う。
幸い、二人に周囲を気にするような振る舞いは見られない。
それは、本来ならほっと息をつくはずの場面なのだが。
「……おかしい、わね」
「アスナもそう思うか?」
そろそろ俺達も、そのことを不審に思い始めていた。
この森林地帯に足を踏み入れて、既に一時間が経過している。当然、こんな安全エリアでもないフィールドをそれだけさまよい続ければ、決して少なくない数のMobと遭遇することになるし、事実俺達もここまでそれなりの数の戦闘をこなしている。それは必然的に《隠蔽》の効果がそれだけの回数弱まったことを意味しているのだが、それを。
「……あのアルゴとシドが、見逃すのか……?」
「そんなわけないよね……」
あの二人が、それも揃って見落とす。そんな偶然が果たして起こりうるのか、あるいはそれが起こり得るほどに、二人はなにか別のことに集中しているということなのか。
不審な点はほかにもある。そもそもあの二人の目的が、さっぱり見えてこない。ここに入ってから二人はほとんど足を止めずに周囲を歩き続けているのだが、あの二人のステータス構成は敏捷一極型。本気で走れば俺達はおろかMobすらも置き去りにできるにも関わらず、それをしない。
(……それが一番安全なんだが……かといって何かを探してるふうでもない……)
変わらずに一定ペースで進み続ける二人。その後姿からは、何も読み取れない。
「っと、キリト君!」
「へ、あ、うわっ!!?」
そんな思案に耽って
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