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Transmigration Yuto
陽だまりのダークナイト
Prologue
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引にあけた後、一番状態の軽かった僕にその同志は叫んだ。
 「逃げて!あなただけでも!」
 僕は、その声を聞いてすぐさま立ち上がり、部屋を脱出した。
 死にたくない、生きたい。
 ただ一心で僕は研究者達の隙を突いて、研究所からの脱走に成功した。
 敬虔たる信者の僕たちに対し、彼らは「最後まで我々を信じて、逃げる者などいないだろう」と高を括っていたのだろう。
 わずかな隙で僕は外に逃げ出ることに成功した。
 「待て!」
 「逃がすな!」
 しかし、追っ手は僕を執拗に追い回す。
 山の森、雪が降る中、僕はひたすら逃げ続けた。
 逃亡しながら僕は心中で研究上で過ごした日々を思い返す。
 共に特別な者になろうと誓った同志達。共に食事をし、共に歌い、共に遊び、共に笑った。
 そんな彼らが―――死んだ。僕だけが、逃げ出せた。
 ……僕は逃げ切らなければならない。彼らがせっかく作ってくれた好機なのだから。
 生きて、僕は……。
 全身の激痛と共に意識も途絶え始める。しかし、僕は強烈な復讐心を宿し始めていた。
 あの者達―――
 あの計画を立てた者達―――
 聖剣エクスカリバーを―――
 僕は、許さないッ!
 けれど、体力も意識も限界で、僕は森の中で静かに倒れ込んだ。何とか体を捻って仰向けに倒れたが、無駄なことだ。
 もう、指先すら動かない。
 ……死は確実だろう。
 彼らの、同志達の死を無駄にしたくない……。
 僕は……僕は……ただ、生きたかった……。
 教会の近くまでよく来ていて、僕によく懐いてくれていたあの黒猫は元気だろうか?初めて見付けた時は全身傷だらけで血を流していたけれど、もう大丈夫だろうか?
 走馬灯のように、いやこれは走馬灯そのものだろう。僕の心の中を、今まで出会った者達の顔が通り過ぎる。
 僕を養ってくれた孤児院の経営者、僕に優しくしてくれた美しい女性天使、僕と仲良くしてくれた歳の近い同志達、僕に懐いてくれた可愛い黒猫。
 憎き研究者達の顔は、出なかった。顔は知っている、だが、心の中とは言え、彼らの、彼女達の笑顔と並べたくはなかった。
 意識が消失していく中、僕の視界に紅が映り込む。
 仰向けに倒れ、血を流す僕を見下ろす存在がいる。
 ぼやける視界の中、そこには紅髪の少女が立っていた。
 薄れていく視界に、彼女の微笑が映る。
 「あなたは何を望むの?」
 死に行く僕を抱きかかえた彼女はそう問うた。
 その時、僕の頭の中に様々な記憶、いや、記録が、知識が流れ込んできた。
 これが、僕と、彼女、リアス・グレモリーとの出会いだ。
 ……この日、僕は、前世の記憶を思い出した。





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