第一章 〜囚われの少女〜
死刑執行人
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の味はなかなか好評らしい。
その酒を飲もうと城下町に住む者、隣町の民など、様々な身分の者たちが押し寄せていた。
店内は和やかなムードに包まれていたが、とある人物の登場によって雰囲気は一変する。
木製の扉を開いて侵入してきた者の外見は、まさしく死神。黒いフードをかぶっている。しかしその背に負われているのは鉄製の大斧。
異様な雰囲気の漂う男に、酒を運んでいたウェイターが立ちはだかった。
「あんたにやれる酒はないよ」
しかし、呆気なく男に片手で押し飛ばされ、派手な音を立てて後ろに倒れる。グラスが割れ、盆からひっくり返った酒で、ウェイターの頭はびしょ濡れになった。
その可笑しな様に笑う者は一部の下衆どものみで、男を恐れ、店内はひそひそと噂をするような声でざわめく。
不穏な雰囲気が漂うなか、男は店の奥のカウンターへと向かう。人々は男から離れ、男の前に道をつくる。
店主は何か言いたげだが抵抗できず、男がそこに腰を下ろすのを許してしまうのだった。
男は静かに、酒だ、と店主に要求するが、店主は困ったような顔でようやく言葉を発した。
「いろいろ大変なのはわかるけどなぁ……あんたに出せる酒はないんだ。それにあんた、今日は仕事――」
しかし男は店主の言葉に耳一つも貸さなかった。
それどころか、隣の席に先程まで居た客のジョッキをわしづかみにした。頼んだばかりだったのか酒はいっぱいにつがれており、ジョッキの中で荒波をあげた。
そして男はその酒を一気に胃の中に流し込む。店主は止める間もなかった。
「! ……なんて、こった」
止めようとはしたが、万が一の事があれば自分も咎められるかもしれない。店主は絶望を顔に滲ませ、肩を落とす。
「こんな日に飲まずにいられるかよ!」
店内中が一層ざわざわとした空気で溢れる。おろおろと同様する客、こっそりと逃げ出してしまう客も中にはいたようだ。
大斧を背負った男のその顔は、見る見るうちに赤くなる。
勢いよく立ち上がる男。勢い余ったのか同時にバランスを崩し、倒れた。斧は大男の背中の下敷きだ。
その見た目に反して、酒にはめっぽう弱かったのだろう。
「……おいおい。弱いのにあんな飲み方したのか……?」
にしても困ったな……。と顎の無精ひげを触りながら、呆れた顔の店主は男の始末に頭を悩ませていた。
――
銀の瞳の男がいた。
その瞳の他は、ほぼ全てが黒い布によって覆われている。
どこからどう見ても怪しい、まるで黒魔術師でもあるかのようなその人物。
黒いフードをかぶり、口元は黒いマスクで覆われている。
その背には鈍色の大鎌。この男こそ死神というのに相応しいかもしれない。
銀の左目の下には十字傷、そして黒服の肩にも十字架の描かれた腕章がはめられてい
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