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渦巻く滄海 紅き空 【上】
二十五 決着
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あのガキのせいで何もかもがパァだ。
長年掛けた計画も、素晴らしき肉体も、圧倒的力をも。今の、この状況も。

(―――偶然だ)
気味の悪さを感じながらも、神農はそう自身に言い聞かせた。己を説得し、落ち着かせる。事実、そうすることで彼は自我を保っていた。

顔を上げる。追い駆けてきた金髪少年を目にした瞬間、腸がグツグツと煮えくり返った。今にも殺してやりたい衝動に駆られる。指がわきわきと空を掻く。

目前にいるのは無知な子ども。それも己の崇高な考えも理解出来ぬただのガキだ。対する自分は世界を渡り歩いたあの神農である。いずれ世界を支配し、空の帝王に君臨する男。それが、たった一人のガキに追い詰められた。更にはみすぼらしくやつれ、このような惨めな姿に。
自己嫌悪する。今の今まで若々しい肉体だったために、皺だらけの身体に嫌気がさす。そして自尊心も甚く傷つけられた。唯一残った誇りの一欠片すら、少年の青い瞳を視界に入れた瞬間、燃え尽きる。
無意識にわなわなと震える身体。迸る殺気。それを抑えることなど不可能に近い。ただ、どす黒い嫌悪が募るばかり。

神農が自暴自棄になるのも時間の問題であった。







「――此処は零尾の集めたチャクラを吸収し、アンコールバンティアンの動力にする場所さ!此処に立った今、貴様らのチャクラも零尾に吸収され、無力化されてしまうのさぁ!!」
勝ち誇ったように叫ぶ神農を、ナルトは憐憫の眼差しで見下ろした。零尾を目の当たりにして後ずさる香燐を眼の端に捉える。

円を基調とした要塞の中枢。中空になっているその内装はやはり広間同様、緑一色に揃えられている。
継ぎ目無しの鮮緑色の壁。奥行きは深く、まるで大伽藍のような空洞であった。だがその場に流れる空気はとても清浄ではなく、息苦しいほど澱んでいる。その原因が中心に吊り下げられた繭というのは言うまでも無い。
砦の低層にあたる此処は、入り口も出口も見当たらない。唯一の通り道は今正にナルト達が立つ場所だ。外板の一角をそっくり切り取った正方形の穴のみが廊下と繋がっている。

「香燐」
零尾から遠ざかっていた香燐に、ナルトは呼び掛けた。ゆっくり後退しつつ頷く彼女を確認する。立ち止まった香燐の隣で、彼はチャクラを練った。
出現するもう一人のナルト。彼は零尾に吸収されることなく、悠然と立っていた。香燐が零尾の力が及ぶ範囲を測ったためである。出入り口からは遠く離れてしまったが、この地点ではまだチャクラを吸収されない。【神楽心眼】でそう察知した香燐に従い、ナルトは影分身の印を結んだのだ。

「打ち合わせ通りに」
「了解」

袖口に隠しておいた巻物を受け取る。意を決したような表情で頷いた香燐と、もう一人のナルトを置いて、彼は飛び出した。神農と同じ土俵に降り立
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