彼と並び立つモノ
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すぎるが、彼らは曹操と相対しなければならないと考えている為にそのくらいの将でなければ足手まといでしか無い。
せめてもの最低ラインと決めているのが曹操の元に居る楽進や于禁である。
楽進ならば、正道を突き進んで途中で陣容変化もせずに力で抑え込みに来て、無理やり退却してもある程度の追撃を行うくらいはしただろう。
于禁ならば、徐晃隊までとは行かずともそれに近い形の対応力で戦線を維持し、じわりじわりと兵の数を減らしに来ていただろう。
しかしどのような将が来ても搦め手で引きずり込む準備は出来ているので追って来ようと来なかろうと問題は無かった。その証拠に――
「それと……事前に伏兵として置いた徐晃隊は既に下がらせておきました」
雛里の元に副長という徐晃隊の重要な人物を残していたのだから。
釣り野伏せという戦術がある。それは寡兵で以って相手に突撃、後に引き込んでの三面包囲。将棋で言う受け、つまり逆撃を最も得意とする雛里と相性が抜群な策。少数で多数を打ち破る為に使われた、日本の勇猛な戦国武将一家が好んで用いた難易度の高い策。
元からここに来た徐晃隊の最大兵数は隠しておいたのだ。敵に与える情報の操作すらも抜かりなく行って。
雛里の恐ろしい所は……釣り野伏せ戦術を秋斗から聞いたわけでは無く自分で考え付き、徐晃隊の実力から最も効率的に行えるようにアレンジし、膨大な兵数の戦でも行えるように確立させている事……でもあるのだが、予定通りという事は、攻撃力が一級品だというのは間違いないというのに、雛里はこの釣り野伏せすらも副案として使うだけだと決めているその一点。
戦の先を読み、全てに対応する力は昔からあった。そこに経験を積んで入り混じったモノは、戦場を思う様に捻じ曲げる能動的な軍師の思考。彼女はもう、戦場に於いては飛ぶことの出来ない雛に非ず。
「次の時機はいつがいいと思う?」
「挑発の成功、警戒と恐怖、鈴々ちゃんの不在、袁家の思考……敵将自体の武力も高くないのでしたら――」
知性の宿った瞳でつらつらと雛里が次の予測を話して行く。全てを聞き終わると秋斗はポンと一つ彼女の帽子の上に手を置き、
「なら直ぐに行動に移るが……さすがは雛里だ。俺達の全てを操ってくれ。お前なら完璧に出来る」
頼りにしているぞ、という正直な信頼の気持ちを笑みと共に向けた。
「し、秋斗しゃんと徐晃隊の皆さんがい、いてこしょでし……あわわぁ……」
張りつめていた精神に放たれた無自覚男の奇襲は彼女の心を一人の少女へと引き戻し、噛みながら帽子を急いで下げて照れ隠しをする愛らしい少女の様子を見てか秋斗もいつもの自分を取り戻した。
「クク、ありがとう。そうさな、敵の第一波を予定通り処理出来たら、徐晃隊の皆と鈴々達に簡単な料理を振る舞おう
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