暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
彼と並び立つモノ
[4/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
方が怯えているから空元気、こちらこそが強者であり、喰らう側だと。そうやって心のほんの些細な所に慢心が生まれ出ずる。
 対して、年若い将は男に見下された事で頭に血が上り始めた。この寡兵の軍にさえ勝てるわけが無い、お前は無能だと言われているのだから当然と言える。
 将である少女も敵兵も気付かない。彼がわざと自身から溢れ出そうな覇の気を抑えて言葉を紡いでいる事に。挑発の基本は抑え付けるでは無く引きずり込むという事を彼はシ水関で袁家の将から学んでいたという事に。

「傲慢に過ぎるな黒麒麟! 如何に貴様個人が強かろうと、兵法の基礎も分からぬお前では我らに勝てん! 成り上がりの将風情が調子にのるなよ! 戦というモノを思い知らせてやる! 全軍、掛かれっ!」

 戦端は突如として開かれた。己が力に過信したモノからの挑発は袁術軍にとって戦を始めるのには十分な理由となった。
 相手が激昂する様を見て、敵が雄叫びを上げながら動き出し始める中で、秋斗は緩く片手を上げて後ろに構える徐晃隊に簡略的な指示を出す。
 徐晃隊はその手を見て最前列以外が少しだけ後退しながら腰を落とし、列の隙間を開け始める。
 敵が突撃してくる最中、まだ敵とぶつかるには遠いというのに、彼は手を振り下ろし、心底つまらないとも取れる声音で短く一言呟いた。

「槍を降らせ」

 瞬間、ある程度感覚を開けた徐晃隊前方の列から順繰りに投擲される数多の槍。その槍は兵達が普通に使うモノよりも短く、容易に敵兵まで届き得た。
 矢ならば防げるように対策はしてあっても、袁術軍にとってそんなモノの対応は初めてであり、弓兵がいないとの報告を聞いていた全軍、中でも槍の雨を浴びせ掛けられた中央敵兵は混乱に呑み込まれる。大きなエモノの飛来は本能的な恐怖に繋がり、迷いを生んだ。練兵を積み上げてきた精兵たる徐晃隊の投槍は正確にして強力であり、ある程度敵の数を減らす事、そして中央部隊だけ突撃の脚を止める事に成功する。
 打ち降りた槍は軽装であれば穿ち抜き、例え盾を頭上に構えようとも突撃の最中であるが故に当たった重みによってたたらを踏む。木盾に於いては突き刺さった槍が邪魔をして隊列が乱れる。
 事前準備で為していたモノは様々、その一つが投槍。本来、捨て奸をするのに必要なモノは鉄砲や弓であったが、鉄砲などこの時代にあるはずも無く、秋斗は弓の事がからっきし分からない為、徐晃隊の主力が歩兵な為に槍を投げさせる事を選んでいた。敵に再利用される事など目に見えているのだが、槍を投げるのには技術も要し、使い慣れている長さとは違い、違和感は戦場で決定的な命取りとなる為に直ぐには扱えない。奇策の類、しかし初手にそれを行う事にこそ意味がある。

「さあ、貫け徐晃隊! 敵中央を食い破れ! いつも通りだ、俺について来い!」

 投槍
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ