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乱世の確率事象改変
彼と並び立つモノ
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ている。

――でも大丈夫。私も次からはそれを使いこなして見せますから。

 思考に潜る中、楽しそうに笑う鈴々ちゃんの幼い声と普段の飄々とした彼の優しい声が天幕の外に聞こえた。
 敵陣への夜襲返しに向かっていたがもう帰ってきたのか。そこまで大きな戦闘は行われないだろうと踏んでいたけど、残りの兵は逃げてしまったんだろう。

「ただいまなのだ! 雛里の策のおかげで大勝利なのだ!」
「ただいま。そうだな、さすがは雛里だ。お疲れ様」

 さっと天幕を開けて入ってきた二人は既に普段の様子に戻っていて、私の事を褒めてくれる。

――二人と兵隊さん達が居たからこそ出来た事なのに。

 口から零れそうになった言葉は事前に止められる。自信を持て、と言っているような彼の優しい瞳によって。

「あ、ありがとう……ございましゅ」

 頬が熱いので顔が赤くなっている事だろう。でも、どうにか帽子を下げないで前に立つ二人を見上げた。
 そんな私の頭を秋斗さんが優しく撫でてくれて、嬉しくて胸がじんわりと暖かくなった。すると鈴々ちゃんが少し不服そうに彼を見つめ始めた。

「むぅ……お兄ちゃん、鈴々も!」

 普段通りの鈴々ちゃんの姿を見てか秋斗さんから苦笑が漏れ、すぐにもう片方の手でその頭を撫で始めた。
 彼女は彼に甘えたいだけ。素直で純粋無垢、子供のような彼女はまだ彼に恋心というモノを持っていない。兄のように、父のように慕っているだけ。
 きっと鈴々ちゃんはよっぽどの事が無い限り私のような恋心を抱かない。そんな気がする。長い時間を掛けて勉強して、恋心というモノを知っていくしかないだろう。大人に見られたいからという理由で恋の真似事をしても、鈍感な彼から理由を問い詰められて諭されるだけだろう。
 ただ……彼女みたいに素直に甘えられたら、なんて羨望の心を持ってしまう。
 撫でられて嬉しそうに目を細める鈴々ちゃんから目線を外し、じーっと彼を見つめていると目が合った。直ぐに気まずそうに目線を逸らしてきて、

「さて、敵陣に残されていた兵糧も奪ったし敵軍は引き上げた。これだけこっぴどくしてやったんだからしばらくは攻めてこないだろう。後方の本陣に引いて月と詠も安心させてやろうか」

 簡単に先程の報告を行った。緩くなりそうな雰囲気をしっかりと引き締めてくれる所が愛紗さんみたいだな、なんて思ってしまった。

「そうですね……鈴々ちゃん、張飛隊の皆さんはまだ行軍出来る?」
「んー……あいつらは元気だからなぁ……城まで戻っても大丈夫なのだ」

 にゃははと可愛らしく歯を見せながらの返答を聞き、思考が纏まる。さすがに城までは無理だと思う、とは言わないでおいた。

「では直ぐにでも行動しましょう。帰るまでが戦、という事で」

 きっと
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