彼と並び立つモノ
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によって二千弱もの捕虜……否、新規の劉備軍を獲得した。
彼が率いる徐晃隊と共に戦場で指示を行う中、敵将について陣内にて徐晃隊員が打ち倒したとの報告があった。
捕えて逃がしても良かったが、人とは成長するモノだから失敗を生かす機会を与えてやらないというのが彼の思惑。仮に、敵将が噛ませの役目では無かった場合も、これほど容易に壊滅させられたとして袁術軍の思考を焦りに縛る事が出来るのも理由の一つ。
自軍に引き込んだとしても実力を伸ばす時間が足りないので将の投降は却下。挑発に乗るという事は自尊心が高いという事であり、兵に落としてやり直させるとしても内部で揉める事は目に見えている。以前まで率いていた将を亡き者にしてしまえば投降してきた兵の掌握も行い易い。
戦場の彼は冷たい。いや、敵に対して残酷なだけ。
捕虜にしても、初めから投降してくる全てを助けるつもりなど毛頭無かったのだ。
「鎧を脱ぎ捨て、袁家を捨てる事が出来ない自身の嘗ての仲間を殺したモノだけに投降する事を認めてやる。俺に従うというのなら結果で示してみせろ」
徐晃隊で敵軍を貫いた先、鈴々ちゃんの部隊に一つの指示を出してから、武器を降ろした敵兵達に彼はそう告げた。
たったそれだけの言葉で阿鼻叫喚の地獄がそこに顕現する事となった。武器を捨てたとしても従ったとは認めないという彼の言葉を聞き違わなかった副長さんは、戸惑い怯える一人を無作為に切り捨てた。そうすると直ぐに、元袁術軍の兵士達は鎧を脱ぎ捨てて戦場へと駆けて行く。
嘗ての仲間を殺させる。言い方は酷いモノだろう。だが、兵士として軍に組み込んで強化する事が出来るという点では間違いなく効率が良かった。
己が軍の被害も減らす事が出来て、敵兵の混乱も助長し、心の基準線を無理やり越えさせる。生き残ったモノだけを心から服従した同志として認める事が出来る。
彼が作り上げたのは徐晃隊の基礎である絶対服従の精神。これを以ってして今回従ったモノ達は全て彼の配下となり、既にいる徐晃隊によって懐柔されていく事は想像に難くない。
狂信は伝播していく。男性にして圧倒的な力を持つ将という異常な存在と、彼のこれまでの行いと、後に見せる本質によって。冷酷な戦場の黒麒麟では無く、平穏を望む優しい人である事を知ってしまうと……兵の皆は憧れてしまう。自分もそのようになりたい、想いを繋ぎたいと願ってしまう。
今回の敵は見てしまった。四倍の兵にも臆することなく真正面から突撃するその姿を。
噂で耳に挟んでしまっている。どれほど傷だらけになろうとも人を助ける為に動く人だと。
もはや彼らの心は彼の齎す黒一色に染まっていくだろう。
なんて綺麗で残酷で見事な人心掌握。軍師としての私の心は、敵兵を組み込む案は彼が思いついた事だという事実に少し嫉妬してしまっ
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