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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
相対性
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街区よりも多いのが理由である。
層全体に砂と岩しかないため、ショップで売っている食材アイテムが乾物系しかないのもまた特徴的であり、またプレイヤーが寄り付かない理由の一つにもなっている。
泥団子を平たく伸ばして乾かしただけみたいな家屋の壁に背をもたれかかせ、金褐色の巻き毛を持つ少女は膝を抱え込んで顔をそこに埋め込んだ。
フィールドではないので、そこかしこにカンテラが吊り下げられているが、その柔らかな光は少女の顔を照らし出すには及ばない。
「心が痛むかね?」
路地の奥、底が見えない暗闇から唐突に声が響いた。
どこまでも伸びる大樹の年輪のような多大な年月を感じさせるしわがれた声は、特に声を張っている訳でもなさそうなのに、夜闇の空気を伝ってどこまでも響き渡っていった。
その声にアルゴは、膝の間に埋めた顔を上げずに応える。
「当たり前だろウ。…………弟、みたいなモンなんだからナ」
くっく、と路地の奥にわだかまる闇から、思わず出たという風な笑い声が漏れた。
「弟、か。本当にそれだけかのぅ。それ以外の感情じゃあないのかね?」
「…………何が言いタイ」
憮然とした色が混じる返答に、別にと苦笑交じりに応える声。
「動くと思うかね?彼は」
「動くサ」
少女は即答する。
己の――――《鼠》の二つ名に賭けて即答する。
「アイツはそういう奴だからナ。悪に染まりたいと思っても、狂気に落ちたいと願っても、できない奴だかラ」
どこか嬉しそうに、どこか悲しそうに、どこか――――愉しそうに、アルゴは言う。
「お前が何を考えてるかは、バカなオレっちにゃあ小指の先くらいも分からン」
だがナ、と空気中の大気を震わせ、金褐色の巻き毛を持つ少女は言う。
「これだけは言えるゾ。アイツはお前が思うほど、ヤワな存在じゃなイ。今日がどっちに転ぶかは神様も分からんが、オレっちは信じる。アイツはお前より………いや、ひょっとしたらあの《戦神》よりも王の器に相応しいヨ」
「……………………………」
声が沈黙する。
代わりにアルゴの耳が捉えたのは、金属同士が擦り合わせられるような不穏な効果音だった。
空気の質が如実に変わった。殺気がそこかしこから溢れ出て、大気が帯電しているようにピリピリし始める。
その出所は、声が聞こえてきた路地の奥ではない。
本当にそこかしこから、押さえてあったものが思わず漏れ出したとでもいう風に、突発的に出現した。
通りに生える街路樹の裏から。
結構高い家屋の屋根の上から。
路地に据えるゴミ箱の中から。
光が漏れ出る窓の向こうから。
背筋が凍るほどの殺意が振り撒かれ、空間がみるみるうちに血塗られたものと化してい
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