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八条学園怪異譚
第五十六話 鼠の穴その十三

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「だからあそこもね」
「ちゃんと果てがあるのね」
「そうなのね」
「中に入るまでは普通の研究室だけれど」
 それでもだというのだ。
「その果ては二キロ位あるよ」
「二キロって。果てが見えないと思ったら」
「それだけあったの」
「しかも地下室があってね」
 異次元だけではなかった、そうした場所もあった。
「そこが地下迷宮になってるんだ」
「何か凄いわね」
「地下迷宮もって」
「この学園は何でもあるんだよ」
 それこそ地下迷宮でも何でもだというのだ。
「その迷宮の存在は誰も知らないけれどね」
「博士やあんた達以外には」
「そうなのね」
「何か前の戦争の時に陸軍か海軍が作ったとか」
 こうした話はかつて軍が使っていた施設では時折ある話だ、旧日本軍が関わっていると何でもありなところがある。
「そんな噂だよ」
「軍隊が迷宮をなの」
「どうして作ったかよね」
「噂は噂で実際はね」
 鉄鼠はその地下迷宮の真実を話した、ここで。
「学園創設時に非常時の避難先や倉庫として作ったんだ、初代理事長さんが内密にね」
「あっ、そうなの」
「軍が関わっているんじゃないの」
「建築した業者さんには固く口止めしてね」
 そうして内密にしたというのだ。
「しかもその業者さん八条グループの関連企業だから」
「内密に出来たのね」
「そうしたことも」
「そうなんだ、それで博士が使っている場所はね」
 その地下迷宮の中でだというのだ。
「ごく僅かなんだ、無数の部屋の中の幾つかをね」
「図書館とか資料を置く場所になのね」
「使っておられるのね」
 二人は酒と豆を楽しみつつ述べた。
「そうなのね」
「それで迷宮の殆どは」
「博士も使ってないよ」
 そうだというのだ。
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