反董卓の章
第22話 「…………よっ、兄弟」
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―― 盾二 side ――
「……きみ、は……?」
「…………ねねは、ぐじゅ、陳宮ですぞ……」
その少女は、呂布の頭を護るように抱えながらそう言った。
その顔は、どんなことをしても呂布を護る、そう語るような必死な表情のままで目に涙を溜めている。
「そ、か……なら、つ、れて……いきな、よ……」
俺はそう言って周囲を見る。
粉塵と黒煙で周囲は未だわからない。
今ならまだ、彼女たちが逃げることも可能だろう。
「ぐじゅ……どうして、どうして見逃すのですか……?」
陳宮という少女は、自身の鼻を啜りながら少しずつ後退りしている。
彼女に呂布を引っ張っていくだけの力があるとは思えないけど……それでも必死にやれば、なんとかなるかもしれない。
「っ、ぅ……た、助かる命なら……助かるべきだ、と思うよ……それが、敵でも、ね……」
「ぐずっ……わかんねーです……なんで、なんで……」
「っ……呂布が起きたら……言っといて……くんない?」
「ずずっ……なんですか?」
陳宮は脱力した呂布の脇から腕を入れ、引きずるように少しずつ後退りする。
思った以上には力があるようだ。
鈴々の例もあるし……やはりこの世界の女性は見た目に反して力があるんだろうな。
その様子なら、あと少しすれば噴煙で見えなくなるだろう。
「……もう、やりたくない、から……仲良く、しよ、って……」
「ずずっ……情けない男です」
鼻を啜りながら、陳宮はそう言った。」
「けど……助けてくれたから、必ず伝えるです……」
その言葉と共に、噴煙の中に入って見えなくなる。
ただ、呂布を引きずる音だけが、ゆっくりと遠ざかっていく。
「……主」
動けない俺を抱えた馬正が、俺に視線を向けてくる。
その視線は責めるわけでも、見下すものでもない。
ただ……優しく笑っていた。
「……やっぱ、無理……かなぁ」
「……主ならばあるいは。今はそれで良いかと」
「……謝謝」
そう言って、笑う。
馬正も破顔して、俺の腕を取り、肩を担いだ。
周囲の噴煙はだいぶ薄まり、その様子が見えてくる。
噴煙の隙間から桃香や朱里、雪蓮の姿が見えて――
(やっぱり、まだ死ねない、死にたくない……そう思うのは、情けないかな)
そんな風に、自嘲してしまう。
その視線の先に、桃香たちの笑顔が見えた。
「! あるじっ!」
馬正の切羽詰まった声が、聞こえた。
―― 劉備 side ――
時はほんの少しだけ戻る――
「ご主人様……」
噴煙の中、赤い軌跡だけが蛍のように蠢いては
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