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闘牛士
第五章
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 彼はだ、屋敷で妻に難しい顔でこう言った。
「わからないわ」
「私も、貴方の試合はいつも観客席で観ているけれど」
「それでもか」
「わからないわ」
 困った顔での返答だった。
「どうしてもね」
「そうだな、まだ見ていないところはあるか」
「それがね」 
 どうしてもというのだった、モンセラートも。
「どうしても」
「何があるんだ」
 妻の目を見ながら言う、妻のその目は。
 困ったものだった、彼女も悩んでいることがわかる。
 その目をじっと見る、そのうえで言うのだが。
 ふとだ、彼はこう言った。
「御前も悩んでくれているんだな、俺の為に」
「ええ、あなたのことだから」
 夫のことだ、だから当然だというのだ。
「そうなっているわ」
「そうだな、目に出ている」
「目に、なのね」
「目には感情が出るからな」
 それ故にだとだ、ベルゴンツィは妻に答える。
「それでわかった」
「目ね・・・・・・そういえば」
 ここでだ、モンセラートははっとした顔になった。その感情もまた目に出ていてそれでこう言ったのだった。
「目よ、牛にも目があるわね」
「つまりはか」
「ええ、牛の目は見ていたかしら」
「いや、それはな」
 目はだとだ、こう答えた彼だった。
「目まではな」
「牛も感情があるから、目にそれが出るわよね」
「それもそうだな」
「これからは目も見てもどうかしら」
 牛のそれをだというのだ、それがモンセラートが今夫に言うことだった。
「そうすれば」
「そうだな、それじゃあな」
「ええ、これからは牛の目も見てね」
「相手をしていくか」
「そうしましょう」
 こうしてだった、彼は。
 闘牛において牛のその目も見る様にした。そのうえで実際の闘牛の場でだった。
 牛を観る、牛のその目は。
 ベルゴンツィがはためかす赤いマントの動きを見てそうしてだった、牛は興奮しそしてだった。
 目の色が変わった、黒いその目に炎が宿った。その目を見てだった。
 わかった、今まさにだった。
(来るか)
 その通りだった、牛はすぐに突進してきた、しかも。
 ただひたすらマントを見ていた、そこに突っ込んで来るのは明らかだった。
 彼はそこから間合いも見切った、彼自身ではなく彼が持っているマントに向かって来ているのだ。それで。
 牛をかわすその幅も瞬時に察した、そして。
 最低限の動きでそれを行い牛の身体に剣を刺す、そのうえで。
 向かい側に行った牛にまたマントをはためかす、するとだった。
 また牛の興奮が目に出た、それでまた同じことをしてだった。
 牛を刺す、それを繰り返して。
 牛を倒した、その瞬間観客席から拍手喝采が起こった、そして。
 観客達はその拍手喝采の中でこう言うのだった。
「ベル
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