第一章
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首縊り
中国明代の話である、丁度宦官劉勤の専横が終わり国が落ち着いてきた頃だ。
その頃南京である屋敷のことが話題になっていた。
「またらしいな」
「ああ、また出て来たらしいな」
「あの納屋の中に入ったらいてな」
「見るとそれだけで死にたくなるらしい」
「首を吊りたくなるらしいぞ」
南京の者達は顔を顰めさせて話す、呉青昭の屋敷の納屋で鬼が出るというのだ。鬼とは即ち霊のことである。
その鬼は首を吊った姿で出る若い女の鬼だ、目は吊り上がり舌を出した物凄い形相で首を吊って死んでいるのだ、その赤く血走った目で見られると首を括りたくなるというのだ。
それで家の者達もその納屋に近寄らなくなっていた。これには主である呉も困っていた、それで妻にもこう言うのだった。
「参ったな、鬼が出るとはな」
「そうですね、何か急に出てきましたね」
「この家で首を吊った奴なんておらんぞ」
呉は困った顔で妻にこのことも言う。
「代々な」
「この家は宋の頃から南京にありますよね」
「ああ、ずっと絹を売ってるよ」
それでかなり儲けている、とかく絹は儲かるものだ。
「服もな」
「それでもですか」
「鬼が出る様なことはない筈だよ」
彼の知る限りはだ。
「一体全体何なんだ」
「何でも鬼の服は」
妻は街の噂話から答えた。
「唐代の頃のものだとか」
「唐か」
「はい、あの頃の服だとか」
「それなら知らないぞ」
宋の前の時だ、それならだった。
「もうな」
「そうですね、しかしどうすればいいでしょうか」
「鬼な、それならな」
「導士の方を呼びましょうか」
「それがいいか、いや」
ここでだ、呉はふと思いついてこう妻に言った。
「鬼には狐もいけたな」
「狐ですか」
「ああ、狐を呼んで住んでもらってだ」
「鬼を退けてもらいますか」
「そうするか」
「ですが並の狐ですと」
どうかとだ、妻は夫に考える顔で答えた。
「その目で見られただけで首を吊りたくなる程の相手ですし」
「狐でも普通の狐では駄目か」
「それこそ相当なものでないと」
これは導士にも言えた、そこまで強力な鬼ならだ。
「太刀打ち出来ません」
「そうか、それじゃあな」
「むしろそこまで強い鬼ですと」
「並の道士や狐で無理だとな」
「それ以上の相手に来てもらわないと」
「仙人か?」
呉は袖の中で腕を組み首を捻りながら言った。
「それになるか」
「そうですね、神仙か」
「神仙か」
「そうした相手でないと」
「ううむ、神様もあるか」
神仙という言葉からだ、呉はこちらの場合も考えた。
「そうなるか」
「それなら一度関帝廟にお参りして」
妻はこうも提案した。
「関羽様にお願い
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