暁 ~小説投稿サイト~
「ボクサー だいたいみんなノーモーション
「ボクサー だいたいみんなノーモーション」(1)
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るならば、時、もはや自分の中にあるという事。古、地球がまだ火の玉だった頃から、今に向かって時は進んだ。この平穏を得たければ、熱をもって身体、意識を鍛えよ。さすればこの星の森の豊かさを内に秘めた、濃密な人間になれるであろう」
「ああああああ、ありがとうございます。明日のチャンピオンでした!」

 ハードパンチャーは、大盛りのカツカレーを食って満足し、とてもキレイに澱んだ目でテレビを観ている。その向こうのヤクザな男に目線を送る。「こいつ強い? こいつ単なるかまし?」そんな言葉が頭をよぎりる。「明日のチャンピオンのスポンサーって誰? タニマチとかいるの?」そんな事を考えながら世界一ゆったりとテレビを観る。頭の中にボクサーの記憶などカケラも無く。

「明日のチャンピオン。そんな所打ったら危ないよ。ちゃんとアゴ。アゴ、アゴ。アゴの先でいいよ。脳震盪でダウンなんだからさ」明日のチャンピオンのパンチが、相手の胸を突いた。中村ちゃんは「ああ、俺と同じ。マスタツ? 大山倍達? マスタツ入った?」
 米神をなでながら、不快を吹き飛ばそうとする中村ちゃんは、その不快がどこからやってくるのか知らぬまま、チャンピオンのヒーローインタビューを聞いて笑っていた。

 花道を歩く明日のチャンピオンに群がる若い人々。タノムは中学時代の『棒倒し』を思い出した。あの競技、性格が出る。敵方の守りの上に登る好戦的なやつ。これは分りやすい個性だ。それにしても、ありとあらゆる物は個性を引き出すのに、子供の没個性とは何だろう? ボクシングなんか、パンチ一つにも個性があるのに。「なぁ?」と訊いたら、「全力を出すにはコツがいるんですよ」と、ハードパンチャーが返した。明日のチャンピオンの『声』を聴きながら、「音を出す方は、受け取る側より、確実に気持ちいい」と思った。

 寝そべりながら、空っぽの頭の中にもやもやしたうずきがあるのを感じている男達。明日のチャンピオンがノックアウトした後に、その意識の薄いあほんだらは、やおら立ち上がり、チンコ踊りをし始める。
「俺、ヤリチンになれる!」
何故かそう思ったのだ。

「タノムさんこのカツカレーいくらですか?」ハードパンチャーが訊く。
「払うの?」
「いくらですか?」
「650円くらい?」
「ああ」と、ハードパンチャーは天井を見て考えるふりをした。「ご馳走様でした!」何も考えていなかったようだ。

     ※

「いわゆる豪傑ですよね?」明日のチャンピオンが言う。
「よく知ってるねぇ」と言って豪傑がケツを叩いた。みんな結構笑っている。
「酒はなんだ? こういう時はシャンパン? 何? 何でもあるよ」
「響あります?」
「いいねぇ」そんな話の席にキックボクサーがいる。
「キックは強いんじゃないの?」そう言って笑う明日のチ
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