「ボクサー だいたいみんなノーモーション」(1)
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い。太陽。消え逝く者の最後の熱。それを内に秘め、形を変えて人々に与える。良き植物は、人々に過去に在った物を知らせ、違う形になるように促す。すなわち太陽在りて人間進化す。
コーヒーを飲み終えて、原付を走らす。警備員の青いジャケットに、白い太目のベルトを着けて、足には安全靴。郊外のスーパー。閉店後の清掃。一月に一回あるらしい。控え室に入るとタノムは「現場入りました」と管制に連絡する。「ゆるい仕事をありがとう」控え室に雑誌が積まれている。これから出すものなのか、それとも返品か。こういうシチュエーションで見るなら女性誌。人目のあるところでは立ち読みも出来ないから。袋とじをのぞけば、エロスが溢れている。
「彼、一生懸命キスしながら自分の股間をいじってました。そういうのが普通なのかな? って思ったんですけど、後で聞いたら、『女の子の前で皮かむりチンコなんて見せられないから』って、言ってたからすごく愛おしくなったんです。『ちっちゃい時も見せてよ』って言ったら、恥ずかしがってまた、皮をむいておっきくしようとするんです。『赤い先っちょが膨らまないと落ち着かない』って。それが、彼。私のオッパイを見ると萎えるんだそうです。もう、その時から『射精が早かったらどうしよう?』って心配になるみたいで。そしたら私、思いついたんです。もう、勃ったらすぐ出し続けてあげようって。何だか彼が好きなのか、何かの競技にチャレンジしているだけなのか。フェラチオマシーンになっちゃいました」
うん、相性の悪い相手とのセックスは単なる競技だ。タノムは雑誌を置いた。ブラインドから店内をのぞけば、清掃員が機械を操って暗い顔をしている。「堕ちたのか? 人生からこぼれ落ちたのか?」人生ちゅうのはね貯金が大事よ。何も徳を積めとかそんな話じゃねぇ。出口だ。自分の人生でちゃんと出口を求めなきゃいけねぇ。コツコツ階段を昇るんだ。それがないと世の中のすべてのものが太陽を覆い隠す雲になっちまうんだ。
タバコをふかす。雑な想念が寄ってくる。ジャケットを脱いでシャドーボクシングをする。想念燃えておでこを熱し、体冷えると燃えた部分固まる。
スネ毛が抜けてツルツルに。
「俺はキックボクサーとシンクロしているだなぁ」
ビタミンCを多めにとる。
「誰か若い女がツヤツヤになっているべぁ」
何だか体が揺れている気がする。
「地震の予兆だぁな」
タノムはタバコをくゆらす。
「知恵の煙とは言ったものだ。今頃、誰かが小説書いてるぜ」
次のW杯はどうなるかな。
「日本代表のN君を見ていると『サル!』と、頭の中に声が響くんだな」
タノムは昔、シンクロニシティーの話を聞いた後、怖くなった。「自分のサンドバックを叩く、殺意にも似たものが、何か世の中に悪い影響を与えてはいまいか?」と。次第にタノムの
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