新たな生活
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挨拶をしようかと考えても、『結婚のご挨拶』じゃ、許可もなくもう結婚かよって話だし、でももう結婚するのは決めてるんだし、なんだかなぁ…と思ったんだけど。
結局、『結婚させていただきたいと思い、お許しを頂きたくご挨拶に伺いました』って言う事にしたんだけど」
全部言えなくて、残念だったね。
そう、ちょっと寂しそうに笑う清志さんを励ましたくて、私はわざと大きな声で言った。
「気にすることないわよ!ウチの父親、気分屋だもの。孫でも生まれたらきっとヤニさがってなし崩しに出入りできるようになるわ」
「…そうなの?」
「うん、だってなんだかんだ言って私には甘いもの。娘は私一人だし、兄の子供は兄嫁が離さないからそれほど可愛がれないって、母も言ってたし」
きっとメロメロになるわよ。そういうと、彼も少し気分が浮上してきたようで
「そうなるといいね」
と笑ってくれた。
そんなこんなで、私達はどちらかというと宝塚に近い少し田舎くさい街で新婚生活を始めた。
親からの助けがないようじゃ、別に実家の近くに住む必要はないし、
だったら、同期や知人、友人の多い宝塚の近くの方が、親しみもあるし、色々助かる事が多い。
「あんたもゲンキンねぇ」
トモが生きてたらそう言って笑うかもしれない。
うるさいわね、だって宝塚が好きなんだもの。別にイイじゃない、宝塚の傍にいるくらい。
今だって、宝塚の舞台に立てるものなら、立ってみたい。
でも、それと清志さんのお嫁さんになるのを天秤にかけるとしたら、どちらかしか選べないとしたら、
清志さんのお嫁さんになりたい。
それだけのことだ。
実際、暮らしに困る事は実はさほどなかったりもする。
清志さんは戦争で負傷したから、『増加恩給』の対象になっていて、要するに国からお金がもらえるのよ。
あんな風に気が弱い人だったから、上司にはこき使われていたみたいだけど、その代わり上司も、清志さんの足がなくなった時には、「最大限困らないように」って色々と便宜を図ってくれたみたいで。
敗戦間近、一番なし崩しに色々ともらえなくなりそうな時期だったにもかかわらず、もらうべきものはきちんともらえる状態で帰還させてくれたらしい。
あとは食べるもので、こればかりは農家に知り合いもいないし、少し苦労するかなぁと思ったんだけど。
「まつの仲間はオラの娘と同じようなもんだ。困った時は、お互いさまだぁ」
と、なんと紅のお父様が自分の家で作っている食べ物を分けてくださったりとか。
「エリさ〜ん、おすそわけですぅ」
と、下級生の子なんかも実家から送ってきた食べ物を置きに来てくれたりだとかするものだから、
まぁ、十分に食べられるわけじゃないけど、死なない程度には生きていけるわね。
こうして、上級生のお祝い事とかに呼ばれて、たらふ
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