青春の終わり5
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ータンさんをみながら、少し顔が赤くなってしまったかも。
…乙女じゃなくなったって、そんなあからさまに言わなくても…
「うちは退団公演はせぇへん。このキズを恥ずかしいと思うてるんやないで?ただ、お客様にとっての『宝塚の嶺野白雪』は、あくまでも火傷のなかった頃のうちでありたいと思ってる。その代わりに、今日の披露宴を開いたんや」
「リュータンさん…」
「大好きだった大劇場の代わりに、大好きだったこのすき焼き屋で。大好きだった、もう着る事のない燕尾服を着て。これから寄り添って生きていくわたるさんと一緒の晴れ舞台を、あんたらに焼きつけることが、このリュータンの『退団公演』や!」
だから、泣くんやない、あんたもしゃきっとして肉でも食っとけ。
リュータンさんはそう言って、他の招待客の方に行ってしまった。
私は…
私は。
嬉しさと、戸惑いと、ごちゃごちゃで。
整理もつかなくて、地に足もつかない感じで、でも。
でも。
ああ、やっぱりリュータンさんはカッコいい。
私もリュータンさんみたいに、強くありたい。
今はまだ、何をしたらいいのかよくわからないけど、それでも。
リュータンさんみたいに、今日のこの日を『区切り』にしよう。
戦争をしてしまったから。
戦争に負けてしまったから。
友が死に、知人が死に、大勢の人と別れ、孤独を感じてしまったから。
だからあの「楽しかった日々」を懐かしんだり、後悔したりする繰り返しの中で埋もれていくだけになっている自分にサヨナラしよう。
「リュータンさん!待ってくださいよう、私そっちのお肉も食べたい!!」
青春は、終わった。
キラキラしていた、少女だった日々は終わった。
でも、私は。
いつまでも、「紅花ほのか」で、「紅」で、「かまぼこ」
それでいい。
もう始まっている「今」を、
自分らしく、たくましく。
いつも胸に秘めている「清く、正しく、美しく」のタカラジェンヌらしさも忘れずに。
明日に向かって、前を向いて顔をあげて歩んでいこう。
青春が終わっても、私は私らしく歩んでいくんだ。
そう決意した、秋の良き日。
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