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久遠の神話
第八十七話 スフィンクスの問い掛けその六
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「とにかく髪の毛のことはだ」
「大ちゃんも気をつけてね」
「ウィリアム王子みたいなことがあるからな」
「遺伝はあるから」
「今はまだいいがな」
「将来はね」
 この話で終わったのだった、この日は。そして上城は次の日樹里に両親に言われたことを話した。特に最後の話のことを。
 髪の毛の話を聞いてだ、樹里はくすりと笑ってこう彼に言った。
「実はね」
「実はって?」
「うちのお父さんもなの」
「おじさんもなんだ」
「髪の毛のことを気にしてるの」
 そうだというのだ。
「抜けるかどうかね」
「おじさんの髪の毛って多いと思うけれど」
「最近抜け毛が気になるらしいの」
「そうなんだ」
「そうなの、私から見ても大丈夫だけれど」
 それでもだというのだ。
「最近そうなの」
「おじさんは大丈夫じゃないかな」
「いえ、それがね」
 上城の見立てとは違ってだと、樹里はいささか真剣な顔で話す。
「遺伝でね」
「じゃあおじさんも」
「うちのお祖父ちゃんもひいお祖父ちゃんもなのよ」
「ずっとなんだ」
「そうなの。つむじから来るのよ」
「そうなるんだ」
「それもどうやら今のお父さんの年齢になってきてから」
 来るのは何時かわからない、若くして来る場合もあればいささか歳を取ってからということもあるのだ。この辺りは個人差がある。
「くるみたいだから」
「つむじからだね
「お父さんもうつむじの辺りに蜜柑の皮つけたりして」
「ああ、育毛剤だね」
「そうしてるのよ」
 樹里は上城にこの辺りの事情も話す。
「零も見ていて心配してるのよ」
「自分も将来そうなるんじゃないかって」
「そう、かなりね」
「何か皆心配するんだね」
 上城は樹里のその話を聞いてあらためて述べた。
「髪の毛のことって」
「どうしてもね」
 そうなるとだ、樹里も応える。
「女の子だって」
「そうそう、それうちのお母さんも言ってたよ」
「女の子も髪の毛が気になるってことよね」
「抜けるのが気になるって」
「なるわよ。女の子だってね」
 抜け毛の恐怖とは無縁ではないというのだ。
「それで言ったら本気で怒る人もいるから」
「何か男の人みたいだね」
「一緒よ、そのことは」
 髪の毛のことはというのだ。
「抜けるかどうかはね」
「そうなんだね」
「抜けたくないから」
 誰もが、というのだ。
「恐怖だからね」
「本当に恐怖だね」
「でしょ?私もね」 
 樹里は自分の髪の毛、黒々としているそれを右手で触るのを横目で見ながら上城に対して語る。
「心配してるから」
「女の子もだったなんて」
「意外だったでしょ」
「かなりね。正直驚いてるよ」
「上城君おじさん達とウィリアム王子のこと話していたっていうけれど」
「あの
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