第三幕その八
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「洗ってもらって絞ってもらったらね」
「それでなんですか」
「歩いて踊っていたら中のお水は自然に落ちていって乾くから」
「干してもらうことはですか」
「特にいらないのよ」
そうだというのです。
「お水が中に一杯あって最初は重いけれどね」
「綿ってお水を吸いますからね」
「そう、綿はね」
綿はそうしたものです、お水をたっぷりと吸うのです。
だからつぎはぎ娘は洗濯をしてもらうと最初は凄く重いのです、ですが絞ってもらってそれで後は普通に歩いて踊っているとです。
「けれど今みたいにいつも通りにしてたらね」
「お水が乾いて落ちてなんですね」
「いつも通りになるよ」
「僕も同じなんだ」
ジャックも言ってきました。
「服は乾くから。それで濡れても気にならないからね」
「それでなんですね」
「気にしないんだ、洗って絞って後は絞った後の皺を伸ばして着ればいいんだ」
それで終わりだというのです。
「僕もね」
「いいですね、濡れていても気にならないのは」
恵梨香はジャック達のそうしたこともいいことだと思いました。
「かかしさん達って」
「木樵さんも」
ナターシャはブリキの木樵を見ています、今の木樵は関節だけでなく全身に油を塗って磨いてもらってピカピカです、とても綺麗です。
「油を塗って磨けばいいんですね」
「そうだよ、それは自分でも出来るからね」
「木樵さんにとってはそれがなんですね」
「お風呂に入ることなんだ」
そうなるというのです。
「人間の身体だった頃は僕も普通にお風呂に入っていたよ」
「私達みたいにですね」
「その頃はお風呂も好きだったよ。けれど今はね」
「お風呂に入ることは」
「する必要がなくなったんだ」
こう言ってです、木樵は自分の足元にいる蟻をひょいとまたいで踏まない様にしました。木樵はこうしたことにいつも気をつけているのです。
「全くね」
「そうなんですね」
「今はこれで満足しているよ」
ブリキの身体になった今はというのです。
「油を塗って磨くことでね」
「それで綺麗になるからですね」
「やっぱり身体は綺麗にしないとね」
駄目だというのです、木樵にしても。
「だからこうしているんだ」
「そうなんですね」
「うん、僕は綺麗にしていることが大好きなんだ」
木樵は綺麗好きでもあるのです、とても。
「君達と同じだよ」
「私達暫く振りにお風呂に入られて嬉しいです」
ナターシャはこのことにとても喜んでいます、それは他の四人もです。
「よかったです」
「とても親切なお爺さんとお婆さんだったね」
「はい」
昨日のことを思い出しての言葉です。
「幸せです」
「身体を綺麗に出来ることは幸せなことだね」
「そうですよね」
「幸せっていうの
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