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八条学園怪異譚
第五十六話 鼠の穴その三

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「野兎は生まれてすぐに動けるけれど」
「野兎はそうなのよね」
「毛も生えてるし」
「それですぐに動けて」
「すばしっこいのよね」
「同じ兎でも違うんだよ」
 生まれてすぐに動けるかそうでないか、兎でもそこは違うというのだ。
「兎といってもね」
「それが不思議なのよね」
「同じ兎でもね」
「穴兎と野兎でそこまで違うって」
「凄いことよね」
「まあね、生まれ育つ環境が違うからね」
 同じ兎でもだというのだ。
「そこは違うよ」
「そうなのね、結局は」
「そういうことなのね」
「そうだよ。あと僕達は違うけれど」
 学園にいるげっ歯類は、というのだ。少なくとも鉄鼠が棟梁を務めている一派は。
「鼠は蛇、狐、猫、鳥が苦手だからね」
「天敵よね、どれも」
「それもかなりの」
「そう、こっちの学園の動物園とかの子達は違うけれどね」
 その鉄鼠が棟梁の一派はというのだ。
「そこは違うからね」
「妖怪だからよね」
「その辺りは」
「そうそう、普通の動物とは違ってきているから」
 妖怪になっている、このことが大きいというのだ。
「まあ鼠は一杯いてわしが率いている一派は動物園にいる連中だけれど」
「他にもいるのね、この学園に」
「鼠にも派閥があるのね」
「派閥というか一族というか」
 血縁の話も入る。
「とにかく色々系列があるんだよね」
「鼠の社会もなのね」
「そうなるのね」
「そうそう、妖怪になってない派が殆どだよ」
 鉄鼠の派はそこが違うというのだ。
「そっちは学園のあちこちにいるよ、隠れてるけれどね」
「食堂とか学校の裏とか?」
「そういうところに?」
「そう、まさにね」
 そうしたところにいるというのだ。
「鼠も馬鹿じゃないから姿を見せないだけでね」
「ちゃんといるのね」
「それも一杯」
「いるよ、下水道の隅とか溝の中とか」
 そうした暗くじめじめとした場所にというのだ。
「隠れていて動き回ってるよ」
「何か想像していた通りね」
「それが鼠の世界なのね」
「そうだよ、まあ鼠は鼠で社会があるから」
 彼等の社会、それがだというのだ。
「そこは覚えておいてね」
「どの動物にもよね」
「そういうのがあるのよね」
「そうだよ、虫にもあるし」
 昆虫の社会、それもあるというのだ。
「蟻とか蜂とかね」
「ああ、巣よね」
「あそこよね」
「そういうものなんだよね、まあ妖怪の社会はあれだけれど」
「遊ぶ社会ね」
「そういう社会よね」
「朝から寝床で寝ていて夜は運動会のね」
 何処かの漫画の主題歌の様な社会だというのだ。
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