内なる覇を雛は見つめる
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そういうとこは鈍いのよ」
雛里が考え付いたのだからその手柄を分けさせるような事はダメだという事。雛里と朱里をワンセットで考えてしまうのも悪い癖だ。雛里は雛里、朱里は朱里だというのに。
「……ごめん雛里」
「い、いいんです。私のわがままですから」
慌てて謝るもやはり傷つけてしまったようで、帽子を下げて俺に目線を合わせてくれない。一瞬見えた哀しそうな瞳が心に痛い。
どことなく、いや間違いなく俺を責める空気が部屋を支配し、逃げ出したくなって来た。助けを求めるように月を見ると、若干朱里のお説教モードの空気を放ち俺に微笑んでいた。
「話も纏まったようなので御夕ご飯に向かいましょう。私達三人は徐晃隊の皆さんと食べに行きますね」
月が柔らかく言ってきたが、『私達三人は』を少しだけ強調された事で隠された意味に気付く。
俺にぼっちメシをしろと言っているのだ。徐晃隊のバカ共と食べる事も許さない、と。月は、前の眠り薬の時に分かったが普段穏やかでも怒るとかなり怖いらしい。詠も自業自得だというように俺を見ているあたり、もはや選択肢は残されていないようだった。
「……そうだな。俺も食堂にメシを食いに行くとするよ。じゃあまた明日な」
言いながら立ち上がり、寂しさと自身の愚かしさの反省から自然と下がる肩をそのままに、俺は彼女達の部屋を後にした。
秋斗が去った部屋の中。詠は盛大にため息を付いた。未だに部屋に残る怒気は消えず、雛里の顔も暗い。
「さすがにあそこまで鈍感とは思わなかったわ。それより雛里、秋斗の先見思考って読みづらいのによく分かったわね」
詠による軍師としての純粋な羨望を交えての発言に雛里は少しだけ顔を上げて月と詠を交互に見た。
朱に染まった頬からは照れているのだと分かり、どうにか秋斗の失礼な鈍感発言で落ち込んだ機嫌を直してくれたか、と月と詠は内心でほっと息をついた。
「……さ、最近ですが、秋斗さんの思考の先が案外単純な事に気付いたんです」
その発言を受けて二人は目を見開く。
――あいつの思考の先が単純? 今の事もボクには分からなかったのに?
詠は元軍師であり、その思考の速さも広さも常人のそれとは違う。であるのに、秋斗の思考には追いつけない。
確かに未来の知識を持っているから、というのは大きく、一足とびに軍師の思考の先まで言い当ててしまえる。
それに未来の知識の異常さ、歴史を知っている、というのはその中で生きている人にとってはこう言い換える事も出来る。
『乱世を一度経験している』と。
秋斗は人を殺す事も、戦を行う事も既に行った。自分が将という立場で乱世に入り込んだ事によって、明確に史実のビジョンを脳内に再生する事が出来るようになったと言える
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