内なる覇を雛は見つめる
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証明のように行き着かせる答えが出ている俺の思考と、俺の選ぶ答えを予測してわずかな切片からそこまで辿り着く雛里。頭がいい人間程異常さに気付き、怯えてしまう。
しかし俺のはただのイカサマみたいなモノだから少しだけでもバレるわけにはいけない。未来のある程度の流れを知っているなんてのは、誰かに知られてしまうだけで後の平穏に対する毒となるのだから。不純物の混ざった力で作った平穏は、国を盗んだと責められても不思議ではないモノだから。
「雛里ちゃんも秋斗さんも凄いなぁ……」
ほわーっとした月の一言が張りつめそうだった空気を戻してくれた。そのおかげか詠も直ぐに自分を取り戻し、お茶を一口飲んでほうと息を大きくついた。雛里は照れているようで顔を紅くしていつものように帽子を下げてしまう。
「まあ、あれよね。これで大きな方針は決まった。後は桃香達にすぐ話すかどうかだけど……どうするの?」
問題はそこだった。
現在、俺達は離れた場所にいて煮詰める事も出来ず、白蓮が負けた場合、慕ってくれはじめている民を見捨てるような事を気落ちした桃香が選べるかどうか。
俺自身は復讐や敵討ちを行うつもりは無い。事前に副長達に対して俺が感情的に動こうとしたなら殴って気絶させてでも止めろと伝えてあるので万が一怒りに染まっても大丈夫だろう。
何よりも……月と詠の大切な友を殺した俺がそんな行動を起こす事など出来はしないのだ。彼女達には何をしてでも平穏を作ると約束したのだから、月が持っていた王としての想いを俺が代わりに背負ったのなら、取り乱す事も、憎しみに染まる事もせずに高みを目指さなければならない。
「秋斗さん、私は反対です。桃香様達にはギリギリまで伝えずにいるのが得策だと思います」
「そうね……ボクも反対。桃香が絶対に乗り越えないといけない決断になるからせめて袁術を押し返してからじゃないと」
「私も反対です。それに献策するのは秋斗さんじゃない方がいいかもしれません。また思考誘導をしてしまうと桃香さんからの精神的な依存の対象になり、成長の妨げになりかねませんよ」
潜る思考の途中で、三人は何故かそれぞれが一度目線を合わせてから俺に反対の意を伝えてきた。きっと前の決断の事を心配してくれているのもあるんだろう。
「分かった。なら時機が来たら雛里が朱里と話して二人で献策するのがいいだろう」
そう言うと、雛里は少し口を尖らせた。
「秋斗……あんたってほんっとにバカね!」
突然、詠が眉を吊り上げて俺を叱り、思わずビクリと身体が跳ねた。俺は何か叱られるような事をしたのか。
「雛里とあんたが思いついたんだからせめて雛里だけに献策させなさい。煮詰めるのも充分なんだから朱里は関わらせなくても大丈夫でしょ。もう……変なとこは鋭いのになんで
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