内なる覇を雛は見つめる
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ておく方がいいかもしれない」
最後に見解を話すと月と詠が不思議そうに首を捻った。どさくさに紛れて友の敵討ちの名目で袁紹を攻めるのが定石、と思っているんだろう。
対して雛里は俺と同じ事を考えているのか少しだけこちらを見てから口を開く。
「孫策さんは内部の平定にまず動くでしょうけど……曹操さんは違います。お二人は直接話した事がないので仕方ないかもしれません。私達は黄巾の時に曹操さんとある程度関わってますから思考の先は軽くですが読めます。あの人は孫策さんや私達の領地拡充を防ぐ為に先手を打ち、多少の無理を推してでも袁家討伐後に私達にまで攻め入るでしょう。時間が経つ程に人心が安定して侵略も行い辛くなるので」
そう、曹操はなし崩し的に乱世の意識を広げてくる。徐州の民に俺達の存在が定着し過ぎれば民の反感も大きくなって後々まで響くだろうし。
「でも静観して他の手を打つ、というのはどういう事でしょうか?」
不思議そうに見つめてくる月と詠はそこまでは気付かなかったか。徐庶からの手紙が大きな力となる事に。
雛里は俺に説明してもいいかと嬉しそうに見て来たので、小さく頷いておいた。
四人で寝る夜、詠や月が寝てからも遅くまで寝台で話をしているからか、雛里は俺の未来知識に引きずられる思考の先をある程度読んでくれるようになっていた。さらには確実にそれを為す事が出来る方法を直ぐに弾きだしてくる辺り、天才軍師鳳雛の呼び名は伊達ではない。
「戦には全く関わらず、帝への上奏を行う事です。親族たる劉家が家族で争っているのは心苦しい、民の不安の種になっていると耳にしたので仲裁に向かいたい、と。劉表さんの所にも同じように誰かを派遣するのも忘れずに。その展開となった場合は州牧の任を誰かに任せなければいけませんが、さすがに皇室の血筋の問題の方が優先されるので他の方を推挙してくれると思います。あと、曹操さんが戦でいない隙に行う事こそ最重要でしょう」
驚愕。二人はあまりにぶっ飛んだ考えに目をぱちくりとさせてしばし呆然としていた。しかし詠は直ぐに眉根を寄せて俺をきつく見やる。俺は雛里みたいにそこまで詳しく考えれなかったんだが。
「……まさかとは思うけど……益州を乗っ取るつもり?」
「そのまさかだ。この乱世に後継者争いなどと下らない事で揉めて民を蔑ろにしているようなら、これを機に退場して貰おう。桃香には力を使う覚悟を高めるいい機会になるし。それと、ありえない話だが揉めていなかったとしても劉表への力添えとして荊州に留まれるから問題ないだろうよ。あそこは他の勢力への対抗の為に少しでも多くの力が欲しいはずだ」
詠の目を見つめて話すと彼女の瞳の中に怯えの色が浮かんだ。それは俺に対してなのか、それとも雛里に対してなのか、どっちもだろう。
数学の
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