女の子と猟師のおじさん
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それでもコンラッドに名を呼ばれないことは寂しい。
「「キミがあんまり可愛いから名前を呼べないんだ」って」
「セージっ!」
「えっ……きゃ!?」
何の前触れもなく現れた声の主はルヴァーナの肩を抱くと癖のあるココア色の髪を慣れた手つきで梳くい、唇を寄せた。
あまりのことで身体中が硬直してしまい、思考回路がゼロになる。
まるで、気配がなかった。
周りからよくぼんやりしているから隙を突かれ易いと注意され、当時は酷い言われようだなと苦笑いを浮かべていたがあながち間違ってはいなかったらしい。
「ちょ…離れてよっ!」
「おっ。何だ?妬いてんのか?」
「いいからとっとと離れてっ!!」
はいはいと、別段拘る様子もなく肩から誰かが退いたのと同時に支えを失った彼女はへなへなと湿度のない大地に座り込んだ。
髪とは言え、誰かに口づけをされてしまったのだ。
妙にドキドキと一々反応してしまうのは年頃の生なのか、彼の目の前のせいなのか。
「ちょっ……大丈夫?」
心配そうなコンラッドがこちらに向かって片手を差し出すが、一端フリーズしてから再起動を開始した思考回路がそれまでのやり取りを思い出させ、むうっと頬を膨らませる。
「……ルヴァーナ」
「は?」
「名前……呼んでくれなきゃ立たないんだからっ」
「っ!?」
「ぷっ……あははっ……してやられたな」
「お前が言うな」
そのやり取りを見ていたもう一人は思わず吹き出し、それを睨む少年の隣で必死に笑いを堪えようとしている。
コンラッドと同じく青みがかった黒髪を持つ青年。
やはり異国を連想させる黒には目を惹くものがある。
背丈は兄と同じぐらいだろう、その隣で何やら思案顔の彼と比較しても普段自分達を傍から見ると大体こんな感じなのかとまるで他人事のように考えていた。
視線に気づいた彼は意味深長な目配せをしてくるが、年頃少女としては彼女は貞淑すぎているのかもしれない。
アズウェルのファンの娘ではないにしろ、こんなリアクションされてしまえば何かしらの意図を覚えるのだろうが、けろりとした様子でそれを見ていた。
きっと、からかっているだけ。
自分にそれ以上の感情をぶつけてくるのも求めてくるのも今もこの先も現れはしない、そう己に暗示を掛けている内は。
肩透かしを食らわされた方はあららと、口では残念そうに言いながらも顔は新しいおもちゃを見つけた子供のように実に嬉しそうな顔をしているのが逆に不気味さがupする。
ルヴァーナが地べたに座り込んで数分、そのままの姿勢で後退りをした所為かあま
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