女の子と猟師のおじさん
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…同じことを同じ人間に言いたくないんだけど」
心の中で自問自答を繰り返していたルヴァーナに痺れを切らしたのか、先程よりも声色が低い。
少年がため息を吐くと、すぐに白く濁って消える。
その様に少し見惚れてしまっていた自分に活を入れ、頭を左右に振った。
「ごっ、ごめんなさいっ!べっ、別に避けているわけではなくて……そのっ……びっくりして!!」
「それは俺もだけど」
こちらを見る黒い瞳がかなりあたふたとしている彼女の姿を映している。
そうは言うが、別段驚いた様子は見受けられない。
これが猟師と言うことだろうか。
コンラッドは以前ミレイザに連れられて店にやって来た時とは違い、右肩に如何にも使いこなされている長い銃を担いでいた。
「……これからお仕事?」
「ああ……義姉さんもようやく臨月に入ってくれたからね。大分腕も鈍っているからどっちかって言うとリハビリ中だけどね」
「そうなんだ…」
それにほっとする自分と「リハビリ中」と言う言葉に胸が締め付けられるもう一人の自分がいる。
この世は食物連鎖で成り立っていることくらいルヴァーナでも知っているつもりだ。
だが、やはり動物が殺されると言うのは毎日店の中でお菓子を焼いている彼女にとっては受け入れ難い真実だった。
「安心して良いよ」
「えっ?」
「アンタといる内は殺しはしないから。……ああ、熊とか明らかに襲って来るのは別だけど」
「ありがとう。でも……どうして?」
「義姉さんが言ってたんだ。「女の子の前で動物を殺しちゃダメ」って。俺、そう言うの良く解んないけど、アンタもそうなんでしょ?」
こちらを窺うような視線に妙な緊張が身体中を駆け巡る。
品定めされているわけでも舐められているわけでもないのに、それにただ頷くことしか出来なかった。
きっと相手が村では見ない美少年だからだ、そうこじつけ、妙にあたふたしている己を落ち着かせると今度は違うことが気になり目の前の彼に尋ねてみる。
「ねえ……コンラッドくん」
「何?」
「私、あの時自己紹介したよね?なのに、何で「アンタ」なの?」
「っ!?」
今度は彼が言葉を失う番だった。
ルヴァーナにとっては死活こそならなくとも年頃の少女としては無視できない問題である。
「……」
「えっ、何て言ったの?よく聞こえないよ」
間を置いてようやく口を開いたかと思えば、紡がれた言葉は彼女の耳に届く前に十二月の空に溶けた。
前回と言い先程の口数と言い、喋ることがあまり得意でないことは解っていたが、
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