女の子と猟師のおじさん
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の信頼がある、両親にも祖母にも口酸っぱく言われていたことが今のルヴァーナを作り上げていた。
「これでよしっと」
自室のアール・デコ調の飾りが付いた鏡に向かってそう微笑む。
十年以上も壁に掛けられたまま彼女を映し続けているその中には、古びて所々少し傷んでいる赤い頭巾を被った一人の少女がいた。
赤いコートに身を包んでから年季の入った大きな籠を腕に掛け、いそいそとした仕草で部屋を飛び出す。
「それじゃあ、お兄ちゃん。行ってきます!」
「本当に大丈夫?女の子一人で行くなんてやっぱり危険だよ」
「大丈夫だよっ!道は知っているし。それに私、自慢じゃないけど接客なんて出来ないし」
「はあ……何度教えても覚えないんだろ、ルヴァーナは」
「あはははっ……ごめんなさい」
カウンターまで出ると、如何にも心配そうな顔をした彼が待っていた。
昨夜もあんなに話し合ったと言うのに、アズウェルは賛成出来かねないでいる。
オーダーが入ったのは昨日の夕方、遠方から孫たちが泊まりに来るので明日の午前中までには届けて欲しいと言われたのだ。
森の奥の小屋で一人暮らしをしているビアンコさんは祖父母の代からの常連で、彼女は当初からやる気満々なのだが反対に心配性の兄は配達は自分が行くとなかなか譲らない。
「大丈夫だよ!昨日書いてくれた地図だと割とこの村の近くだったし、それに早く行かないと約束の時間に遅れちゃうよ」
「はあ………………仕方ないね。それじゃあ、くれぐれも寄り道せず真っ直ぐ帰るんだよ」
はーいと、元気良く店のドアを開け放って飛び出す姿を渋々と言った顔で見送る。
今も昔もやはり妹に甘い兄だけが残された室内には九時を告げる教会の鐘が薄く響いていた。
村から数分も歩かない内に目的の森が現れ、野鳥たちの鳴き声が遥か遠くから聞こえてくる。
村の者は陽射しがあまり入らないこの鬱蒼とした姿に恐れて足を向けようとはしないが、ルヴァーナやミレイザの家のように猟師を生業としている者は違う。
年頃の少女ならば気味の悪い場所に敢えて近づかないのだろうが、彼女ならばそこに用事があれば喜んで赴くだろう。
だって、ここは……。
「……何やってるの?」
「えっ?……って、コンラッドくん!?」
森の中に歩き出して数分後、振り向いた先には暗がりからぬうっと現れた彼がいた。
あれから一ヶ月以上経つが義姉と共に店にやってくることはなく、謝るきっかけを失いかけていたがこうも示し合わせたように二人きりになるなんて心の準備が出来ていない。
「………………ねえ」
「はいっ!?」
「…
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