第十一章 追憶の二重奏
幕間 庭園の管理人
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そういった事を研究する専門家ではありませんので、ハッキリと答えられないのですが、『精神力』と言うのですから、外部から取り入れることはないのではと思いますが……それが何か?」
「ん〜……私が知る限り、魔力と言うものはね。大きく『オド』と『マナ』の二つに分けられるの。『オド』は体内に持つ魔力で、『マナ』は自然界の魔力の事なんだけど……それで思うんだけど、あなたたちの言う『精神力』は『オド』のことじゃないかしら?」
「『オド』と『マナ』ですか……ん、どうなのでしょう……聞いたことはありませんが……ですが、もしその通りだとしたら、何か分かるのですか?」
聞いたことがない単語に眉を寄せながらも、仮説であっても長年の謎に近づけるかもと心持ち身体を前に倒すカトレア。
近付くカトレアの顔先に右の人差し指を突きつけたイリヤは、空いた左手の中指で掛けてもいない眼鏡を上げる振りをし、不敵な笑みを浮かべた。
「もし『メイジ』が減った『精神力』を回復させる際に、『周囲の魔力』を吸収することがあるのだとしたら、さっき言った『魔力の過剰摂取』が説明できるのよ。つまり、普通のメイジは一日かけて消費した『精神力』を、周囲からゆっくり吸収したり、体内で生み出したりして回復させるのに対し、あなたはその桁違いの『受け入れる』能力により、周囲の魔力を一瞬で、それも自分の許容量を遥かに超える量を吸収してるんじゃないかってことよ」
「そう、なのですか?」
「私は『メイジ』じゃないから確信はないけど……でも、ま、見てた感じ、そう見当はずれじゃないと思うけどね」
テーブルに左の肘を着け、頬ずえをついたイリヤは、右手を伸ばし、テーブルの端に置いていたティーポットを持ち上げた。
「例えばよ。このティーカップがあなたの身体だとするわね」
そう言ってイリヤは頬を離し身軽になった左手で眼下の自分のティーカップを指差す。ティーカップの中には三分の一程紅茶が入っていた。
「で、中の紅茶が『精神力』だとするわよ。『系統魔法』を使い、身体には三分の一しか『精神力』しか残っていない。普通の『メイジ』はそれを一日かけて回復するのだけど、あなたの場合―――」
イリヤは右手に持ったティーポットを大きく傾けると、勢いよく下にある自分のティーカップに注ぎだした。高い位置から注がれる紅茶の勢いは強く、あっと言う間に紅茶はティーカップから溢れてしまう。
「こんな感じにほぼ一瞬で回復してしまうの。だけど、供給に対して受け入れる器の容量は小さいから、収まりきれなかった魔力は溢れてしまう。ティーカップならただ紅茶が溢れるだけなんだけど……あなたの身体の場合は……」
「壊れてしまう」
俯いた姿勢から発せられた声は、小さく低かった。
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