第十一章 追憶の二重奏
幕間 庭園の管理人
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・・・・・》。つまりは勘であるのだが。しかし、その勘をカトレアは今まで疑ったことはなかった。今までそれが間違っていたことがなかったから。
けれども、今回はそれでも聞いてしまう。
それは自分だけの事ではなく、士郎が関わっているからだ。
だから、カトレアはらしくないと思いながらも、イリヤに食い下がった。
「何か、ヒントのようなものはいただけますか?」
「ヒント? そうね〜……なら、『聖杯』って知ってる?」
『聖杯』?
言葉だけなら聞いたことはある。
本や物語の中でのことではあるが。確か聖人と関わりのある器のことをそう呼ぶと。しかし、イリヤが言っているのはそういうものではないだろう。では何なのかと問われれば答えようはないが……。
「わからないようね」
「……はい」
俯くカトレアに、しかしイリヤは感心したような声を上げる。
「まあ、分かった方がおかしいんだけど……そもそもここが『シロウの心の中』って答えたこと自体が異常なのよ」
「そうなんですか?」
「そうなのよ」
頷いたイリヤは肩を竦めてみせる。
肩を戻したイリヤは、ふと何かに思い至ったように口元に小さな笑みを作ると、テーブルに身体を寄せカトレアに顔を近づけた。
「ねえ、少し聞くけど、あなた人の心が読めたりするんじゃない?」
「え?」
突然の問いに、目を開き驚きの表情を作るカトレア。驚きは変な質問に戸惑ったものではなく、何故それをと言う驚愕であると見抜いたイリヤは、確信を得たように目を細め口元を曲げた。
「そっか、やっぱりあなた読心術師なんだ。だから―――」
「い、いいえ。読心だなんて……ただ、何となくわかるだけです。その人の気持ちといいますか、感情を……ですので、心を読むとまでは……」
慌てた様子で首を振るカトレアの様子を顎に手を当てて見ていたイリヤは、空いた手を振って了解の意を示す。
「分かったわ。そういうことなら、読心術師と言うよりも……そうね、巫女の方が近いかも」
「ミコ、ですか?」
聞き覚えのない言葉を小さくカトレアは呟く。
小さなその声を拾ったイリヤは、乾き始めた口の中に紅茶を流し込み、ソーサーにカップを置くと口を開いた。
「『巫女』っていうのはね。神霊を自分の身体に下ろし、その託宣を受ける者のことよ。あなた人の心を感じたこと以外にも、何か変わった経験とかしたことはない? 例えばそうね、
未来予知とまではいかなくても、妙に勘が良かったりとか、遠く離れた者の声が聞こえたりとか―――ない? そんな経験?」
「っ」
―――ある。
イリヤが口にした事は全て経験した事があるものであった。
散歩に外に出た時、聞こえる筈のない鳥の声が聞こえたり、
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