第十一章 追憶の二重奏
幕間 庭園の管理人
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ろはあるわね。あなたにとっては夢に似ているかも、でも、私にとっては……」
言葉を濁すイリヤに、『では』とカトレアは口を開く。
「……天国、ですか?」
「そう思う?」
「……違う気がします」
確かに天国のように美しい場所ではあるが、カトレアは何となくだがそうではないと感じていた。特に何か違和感があるわけではない。嫌な感じもしない。居心地が良く、何時までもここにいたいと感じられるが、しかし、心の隅で何かが違うと感じていた。
この感じは……そう、まるで、他人の席に座った際に感じるような、そんな何処か自分のものではないという感覚だ。
「ん?」
そこまで考えた時、ふとカトレアの脳裏にある言葉が蘇る。
それは、
「『管理人』」
「ふぅん」
感心したようなイリヤの相槌に、カトレアは顔を上げる。
「イリヤさんは先程この庭園の管理人だと言いましたね」
「そうね」
「では……この庭園の所有者は誰ですか?」
問いに、イリヤは何処か嬉しげな様子を纏いながら頷きを返すと口を開いた。
「シロウよ」
カトレアは、イリヤの答えに内心で拳を握った。やっぱり、と。何となくではなったが、予感はしていた。目が覚めた時から感じていた気配のようなもの。それが誰の者かハッキリとはしなかったが、イリヤの答えを聞いた瞬間それがハッキリと形を持った。
だが、所有者がわかったとしても、疑問は解消はされてはいない。
ここが何処なのかという疑問を。
しかし、自分の中ではその疑問の答えもある程度は形になっていた。
そのため、
「で、ここが何処かわかった?」
イリヤの問いに、その形になった答えを返した。
例えそれが、
「シロウさんの心の中……では?」
「へぇ……!」
余りにも馬鹿げたものであっても。
カトレアの答えに対しイリヤが上げた声には、紛れもない驚きがあった。
「どう、ですか?」
イリヤの反応に手応えを感じたカトレアであったが、それでも半信半疑であった。
「そう、ね。おおまけにまけて六十点ってところかな」
「六十……」
半分は正解だが、残り半分は違うということ。
では、その半分は一体?
「では、残りの四十点分は一体?」
「ん〜……別に教えてもいいんだけど、多分説明しても分からないと思うわよ」
「そう、なんですか?」
嘘ではないと、カトレアは判断した。根拠のない直感的なものではあったが、間違いではないとカトレアは確信している。そもそも今この時点で既に理解不能の状況であるのだ。多分、自分たちの知るものとは別物の理が働いていると、カトレアは|感じていた《
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