第十一章 追憶の二重奏
幕間 庭園の管理人
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を小さく開かせたかと思うと、浮かべた笑みを更に深くした。
「うん。そうそう。そうよね、そう言えばまだ自己紹介してなかったわね」
白い少女は軽く膝を曲げると、白いワンピースの裾を摘むと小さく持ち上げ頭を下げた。
「初めましてカトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ。私は―――」
顔を上げた少女は瞳の中に悪戯好きの猫のような光を灯らせ口を開く。
「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン―――この庭園の管理人よ」
「―――えっと、イリヤ……さん?」
「ん、なに?」
小さな丸テーブルに座ったカトレアは、向かいに座るイリヤに向け少し戸惑った様子で首を傾げてみせる。カトレアの声に顔を上げたイリヤは、鏡のように小首を傾げ返し、注ぎ終えたカップを乗せたソーサーをカトレアの前に置く。
「あ、ありがとうございます」
「熱いから気をつけてね」
椅子に座り直し、背もたれに軽く身体を預ける。
小さな子供の姿でありながら、ゆったりと椅子に座るその様子は、まるでどこぞの女主人の如き貫禄があった。目に見える姿と身に纏う雰囲気の余りの違いに、カトレアは一瞬目眩に似たものを得る。
目眩が消え、改めて目の前に座るイリヤを見直した時、彼女は口から離したカップをソーサーに上に置いたところであった。
カップとソーサーが触れ、小さく涼やかな軽い音を立てる。
「で、なに?」
「あ、はい……あ、あれ?」
視線で促されたカトレアが、胸に湧いた疑問を問いかけようとする。しかし、そこでまた新たな疑問を得てしまったカトレアの顔が、またもコテリと小首を傾げた。
「えっと、これがどうかした?」
「え、ええ。何処から出したのかと思いまして」
少女がテーブルの脇に置いたティーポットを指差しながら視線を向けてくる。カトレアは小さく頷くと差し出されたカップとテーブル、そして自分が座る椅子を見た。
錬金?
いえ、そんなものではないですね……では、一体……?
そう、目の前で湯気を立てる紅茶であるが、それを入れてくれたティーセット一式をイリヤと名乗った少女は文字通り何処からともなく取り出したのだ。一瞬で、それこそ魔法のように……。
「このテーブルと椅子も……」
「コツがあるのよコツが」
「コツ、ですか?」
答えになっていない答えに晴れない疑問を胸に抱きながらも、これ以上聞いても意味はないと何となく感じたカトレアは、意識的に疑問を脇に追いやった。突然現れたテーブルセットの謎を意識の脇に追いやると、新たな疑問が姿を現す。
それは、最初に聞こうと思っていた問い。
カトレアは
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