第十一章 追憶の二重奏
幕間 庭園の管理人
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「ま、本当はここへ来るための術式はあるんだけど。でも、教えても使えないだろうし、それに……あなたならそのままでも平気だしね」
「では、ここへ来るにはどうしたらいいのですか?」
小首を傾げるカトレアの鼻先に、ビシッ! と人差し指を突きつけたイリヤは、ニンマリとチャシャ猫のような笑みを浮かべる。
「むふふ……簡単よ。ここに来る前にシロウといたしたことをすればいいだけ」
「ここへ来る前? ん……っぁッッッ!!?」
頬に指を当て少し前の記憶をさかのぼっていたカトレアの顔が、それに思い至った瞬間火が付いたように真っ赤に染まる。はわはわと手と口を震わせるカトレアをニヤニヤとした笑みで眺めていたイリヤは、わざとらしく両手を開き驚きを示す。
「あら、わかっちゃった?」
「も、もしかして……」
「あなたなら一発ドンッとヤれば来れるわよ。ああ、でもその時は『大典太光世』は身体から離しておきなさい。枕元に置いていたら接触自体も無理だろうから、今回みたいに服と一緒にベッドの外にでも落としておけば問題ないわね」
真っ赤に染まった身を震わせるカトレアに、形容し難い形に握った拳を差し向けたイリヤは力強く頷き、続いて「そうそう」と握った拳を開くと、指を立てて小さな子供に言い聞かせるように注意事項を上げる。
「―――……な、何で知ってるんですか?」
「え? それは…………」
朱に染まった顔を眼前に突きつけられた指が揺れる度に上下させたカトレアが、何とも力の抜けた情けない声を上げる。するとイリヤはふと我に帰ったような真顔になると、「あ、やばい」とそんな擬音が見えるような態度で顔を逸らした。誰がどう見ても何か邪なものがあるといった態度を見て、カトレアは半眼でイリヤを睨み付ける。
「い、イリヤさん……もしかして―――」
ジトォ〜……とイリヤを睨みつけていたカトレアは、ハッと何かを察した瞬間椅子を蹴倒し勢いよく立ち上がった。しかし、その時にはもうイリヤの姿は眼前の椅子の上にはなく、遥か遠く花の園を駆けている姿が。
「ちょ、え? 速っ!?!」
どこぞの怪盗もびっくりの素早さで逃げ出すイリヤの姿に、カトレアは椅子を蹴倒した姿のままで呆然と立ち尽くす。
そんなカトレアに向け、もう手のひら大の大きさにしか見えない距離に立つイリヤから声が掛けられる。
「……―――シロウから貰った守刀はちゃんと身につけておくのよっ! いいわねっ! それじゃあっ!」
「あっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいっ! 聞きたいことがっ! まさかとは思いますが、覗い―――」
言いたいことだけ言うと、身体を反転させ駆け出していくイリヤの背に、カトレアの悲鳴混じりの切羽詰った声が向けられるが、返
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