第十一章 追憶の二重奏
幕間 庭園の管理人
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儚い雪の結晶から形作られたかのような華奢な身体。
雪を思わせる白一色の中、ただ一つだけ瞳の赤が雪原に咲く花のように映え目を引いた。
呆然と見上げていると、雪精の如き少女は小鳥のように小さく小首を傾げる。頭の動きに釣られ髪が揺れ、ミルクに砂糖を混ぜたような少女独特の甘い香りが辺りに漂う。甘い香りに引き寄せられるように、花畑から身体が離れ起き上がる。
「大丈夫?」
「あ、え、っと」
膝に手を当て腰を曲げ、上半身だけ起き上がった自分を見下ろす少女は、傾げた首を下の位置に戻すと、右手をこちらの顔に向かって伸ばしてくる。伸ばされた手を顔の直前で止めると、開いた手のひらを左右に軽く振り出す。
「お〜い、起きてますかぁ〜?」
「あ、っは、はい。大丈夫です。起きてます」
何だか間抜けな応答だと内心で苦笑しながら返事を返すと、少女は伸ばしていた手を戻し曲げていた腰を上げた。
「ん、良かった良かった。本当に久しぶりのお客様だもの、いい暇つぶ―――っと、おもてなししないで帰らせるのもね。ほらほら、何時までもそんなとこに腰を下ろしてないで、折角だし、お茶でもご馳走するからそこの椅子にでも座ってて」
「えっ、と、座ってと言われまして、も……?」
少女が指差す方向を顔を向けるが、そこには美しい花が咲いているだけで、座れるような物は何もない。言いようからして地面に座れと言っている筈はないだろうと疑問の視線を少女に向ける。
疑問の声に、少女が眉を曲げ自分が指差す方向に顔を向けた。
顔を自分が指し示す方向に向けた瞬間、少女の口が「あ」の形で固まる。
自分が指差す先に何もない事に気付いた少女は、頭に手をやると顔をこちらに向け、真っ白な頬に朱を混ぜながら桜桃のような小さく舌をチロリとだした。
「あはは、そう言えば長いこと誰も訪ねて来ないから消していたんだった。ごめんね。直ぐに出すから」
「え?」
少女の物言いに疑問を感じ声を上げると同時であった。
「っ?!」
少女が軽く手を振った瞬間、何もなかった筈の場所に小さな二人掛け用の白いテーブルと二つの椅子が現れたのは。
まるで湧き出たように出現したテーブルと椅子に驚き固まるカトレアの前で、少女は改めて現れた白い椅子を手で指し示す。
「はい、どうぞ」
「……あの、あなたは……?」
咲く花を避けるように地面に手を着き立ち上がり、にっこりと微笑む少女に問いかける。
童女が浮かべるあどけない笑みの中に、歳を重ねた深さがある事に気付いた瞬間、カトレアは直感的にある予感を得た。
まさかと。
そんな筈はないと。
有り得ない。
そう思いながらも、湧き上がる予感はそれが正しいと確信させる。
問いかけられた少女は、赤い紅い瞳
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