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久遠の神話
第八十五話 消える闇その十二
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「だからこそいいのだ」
「そうですね、確かに」
「日本の美食は値段にこだわらないことだ」
「自分で確かめることが第一ですね」
「風聞を聞くことも大事だが」
 美味いものは何処にあるかと聞くこともだというのだ。
「しかしそれでもだ」
「美味しいかどうかは自分で確かめることですね」
「それが大事だ、ではだ」
「はい、ワインと肴はそれで」
「頼む、ではな」
「真のお祝いの時は何時になるでしょうか」
「私が首相になり全ての政策を実現させてからだ」
 それからだというのだ。
「そしてその座を退いた時だ」
「首相になられた時もされないのですね」
「それもまた通過地点に過ぎない」
 そう考えているからだった、権藤はこのことも祝うに値しないというのだ。首相になることもそれに過ぎないというのだ。
 そう話してだった、彼は今は質素だが贅沢な朝食を摂り。
 そのうえでだ、執事にこうも言った。
「やはり朝の粥は最高の馳走だ」
「常にそう仰っていますね」
「粥は質素かというとそうではない」
「手をかけているからですね」
「だからだ」
「ご馳走ですね」
「それがわからない者は贅沢を知らない者だ」
 そして馳走もだというのだ。
「贅沢は何か」
「豪奢な生活をすることではないですね」
「余裕だ」
 それだというのだ。
「余裕のある生活がだ」
「それが贅沢な生活ですね」
「豪奢な生活は金があれば出来るがだ」
「贅沢な生活は出来ないですね」
「それをわかっている者は少ない」
 権藤はこのことを淡々として話す。
「非常にな、しかし私は違う」
「今のお粥にしてもですね」
「最高の馳走だ」
 味わい、そして楽しみつつの言葉だ。
「朝からこれを食べてだ」
「一日に向かわれる、それもまたですね」
「贅沢だ」
 それになるというのだ。
「しかも最高のな」
「ではですね」
「今から歯を磨き顔を洗いだ」
 そしてだというのだ。
「一日をはじめよう」
「では奥様と共に」
「妻に伝えてくれ、今日は遅くなる」
 執事にこのことも告げた。
「会社にいるだけではないからな」
「では政治家の方とも」
「今日は元々会うことになっていたが」
「対立候補のことで、ですね」
「さらに話をすることになる」
「では」
「妻と息子に伝えてくれ」
 遅くなるということをだ。
「だが必ず帰るとな」
「わかりました」
「家に帰らないとな」
 権藤はどれだけ遅くなってもホテルや会社に泊まることはしない、それはどうしてかというと。
「疲れが取れない」
「心身のですね」
「家庭はいいものだ」 
 権藤は笑みを出してはいないがこのことを確かな声で言うのだった。
「私にとっても欠かせない」
「ですね、確かに」

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