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久遠の神話
第八十五話 消える闇その十一

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「その前の第一歩だ」
「では」
「当選の祝いは事務所ではするが」
 これは言うならば儀礼だ、日本では当選した議員は必ず事務所で祝いをしなければならないのだ。法律で定められていないが慣習としてそうしているのだ。
「家ではだ」
「何もしないですね
「一歩にそんなことをする必要はない」
 だからだというのだ。
「それはしない」
「そうですか」
「ではだ」
「はい」
「事務所には達磨を置いてだ」
 そしてだというのだ。
「印はつけてだ」
「そしてですね」
「家では普通通りだ」
 何もしないというのだ。
「シェフにも伝えておいてくれ」
「普通のメニューですね」
「ワインもだ」
 それもだというのだ。
「普通でいい」
「普通ですか」
「シャンパンの必要はない」
 祝いの為のワインもだというのだ。
「そうだな、ランブルスコだ」
「旦那様のお好きなそれですね」
「あのワインは美味い」
 ランブルスコはイタリア産の安いワインだ、発泡性がありかなり甘い。オペラ歌手のルチアーノ=パヴァロッティの出身地のワインであり彼もこよなく愛していた。
「ワインは美味いかどうかだ」
「値段ではなくですね」
「そうだ、味だ」
 重要なものはそれだというのだ。
「味がどうかだ」
「だからランブルスコですね」
「それとトカイだ」
 これもだというのだ。
「これは高いがな」
「それでもですね」
「味が好きだ」
 トカイはハンガリー産だ、古来より王侯達に愛されてきた名酒である。
「だからそれもだ」
「わかりました、それでは」
「それを飲む」
 当選の時にはというのだ。
「いつも通りだ」
「わかりました、それでは」
「そしてだが」
「ワインと共に口にされるものですね」
「チーズとソーセージだ」
 その二つを肴にするというのだ。
「それにしよう」
「どの国のものにされますか?」
「どちらも日本のもの、八条牛乳と八条ハムのものでだ」
 どちらも八条グループの企業だ、言うまでもなく普通に市販で売られているものだ。
「チーズはカマンベールだ」
「では」
「それでいきたくなった」
 やはり味主体に考えてのことだった。
「大事なのは味だ」
「値段ではなくですね」
「高いからといって美味いとは限らない」
 これは真理である、値段が高くて美味いかというと決してそうとは限らないのが世の中なのだ。権藤もそのことはよくわかっているのだ。
「美味いものは安くても高くてもだ」
「ありますね」
「日本では普通のチーズがフランスの最高級のチーズに等しい」
 そこまでの味だというのだ。
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