暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外中編
蒼空のキセキ2
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人は、こんなにも……

 「でへへぇっ……」
 「おーい、ソラー。乙女が出していい声と晒していい顔じゃないわよー」
 「ふぁっ!? あっ、なしなし今のはエヌジーでっ!」
 「ふふっ、あーあ、映像結晶でも出しとけばよかったなー」

 リズにからかわれて、顔が赤くなるのを感じる。それを見て、リズが笑う。その笑みは、嬉しそうだった。私が幸せそうなのを見て、自分も幸せ。そんな感じの優しい笑顔。「あんたの伝えたいことは、ちゃんと伝わってるわよ」と言ってくれるような、柔らかな微笑。

 伝わってるんだね。
 でも、まだまだ私は言い続けるんだよ。

 ―――じきに消えてしまう、この声が出続ける限り。





 儚くて、今にも消えてしまいそうなヒロイン。

 私はそれが嫌いだった。
 その理由を伝えるのに、説明なんて一言で十分。

 ―――実際になってみればいい。

 私は……現実の私は、自分で言うのもなんだけど……いや、自分で言ってしまっても構わないと思えてしまうくらいに、「悲劇のヒロイン」だった。それはもうものの見事に、御伽噺だってきょうびここまで露骨ではないぞ、ってくらいに。

 階段の上り下りすら制限される心臓。
 満足に腕を振って走ることさえできない手足。
 栄養制限の病院食のせいで、白くて痩せっぽちの体。

 生まれつきの病気のせいで十年以上病院住まいなんて、同じ年の人たちには想像だってできないだろう。私には同じ年の「普通の人たち」がどんな暮らしをするのかが想像できないように。そんな「普通」を奪われたのが、私だった。

 体の自由の無かった私は、心の自由を求めた。
 何冊もの物語を読み、何本もの映画を見て、何個ものゲームをした。

 幾人ものヒーローを、ヒロインを見てきた。

 ―――私も、なりたいな。こんな人たちに。

 叶うかどうかも分からない願い。常識では叶うはずがないのだろう。事実、その想いが届かず、この世を去っていく人たちを、私は病院という場所でいくつも見届けてきた。私だって、みんなと同じようになるのかもしれないと、おびえていた。

 でも、それでも、私は願うのをやめなかった。

 もしその願いが叶ったらどうするか。どんな人が迎えに来てくれるのか。どんな魔法が私を助けてくれるのか。どんな世界が私を受け入れてくれるのか。どんな冒険が私を待ってくれているのか。そんなことを、何回も、何十回も、何百回も繰り返した。


 そして、この『アインクラッド』という世界で、それは現実となった。
 想像もつかないほどの幸運で、私の願いは、叶ったのだ。

 自由に動く四肢。
 走っても息の切れない心臓。
 心の踊る冒険。
 最高だと胸を張って言える、仲間たち。

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