第五章、その2の4:弔い
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銀食器は需要に見合った価値があるのだろう、この中では一番数が多い。銀皿や銀のゴブレットは、貴族の食卓に出るものよりもワンランク格上のものだ。続いて小さな宝飾品だ。しかし言ってはなんだが、貴族お抱えの商人でも扱わないような小さなものだ。そこいらの河原で転がっていても不思議では無い程の地味さ。宮廷での盗みは神経を使っただろうに、苦労に見合った成果とはいえない。
(うーん、これってやっぱり言わなくちゃ駄目だよね。でもパウリナさんにはお世話になったし、せめてもう少し時間が経ってから言っても遅くはないような....)
そうこうするうちにサックの戦利品を全て取り出された。銀食器が幾つかに、価値の無い宝石の粒が数個だ。
だが盗賊の盗品自慢はそれに留まらない。驚いた事に、パウリナは下着の中へと手を突っ込む。ぎょっとするキーラを他所に彼女は一番の戦利品ともいえるだろう、紙に包まったルビーを取り出した。南部産の高級品である。
「そんな所まで使うなんてっ」
「女はものを隠す場所が多いからね。キーラちゃんも女子なんだから、覚えておいた方がいいよ」
「......まだ盗んだやつ、持っているでしょ」
「いやいや、これで全部ですよ?」
「まだ、あるでしょ」
疑いが募ると際限がなくなる。キーラの真顔に観念したか、パウリナは口許を引き締めながら懐から一つの箱を取り出した。茨が絡み合った模様をした蓋を開けて中を見せる。戦死者を弔う炎を焚くための粉末が入っていた。貴族が『蒼の弔炎』と呼ぶものだ。
「これって、もしかして......」
「あの任務で亡くなった人達のために、ね。私や御主人は宮廷の人間じゃないから国葬には参加できないんだ。あとリコ君もね。だからさ、集められる人だけ集まって、勝手にやろうって事になって」
「......そっか」
「ね。キーラちゃんも良ければこない?国葬って明日の夜でしょ?それまで時間が空いてるんじゃない?」
「そうだね。特に用事もないからね。じゃぁ、参加しようかな」
「ありがと」
二人は淡く笑みを交し合い、約束を契った。
その日の晩、疲れのためか両親が早めの就寝と相成ったのを確かめるとキーラはそっと外に出て、門で待機していたパウリナと共に夜の王都を歩いていく。自分達がいない間に街は変わっているのかと思ってはいたが、案外そうでもないようだ。闇を照らす衛兵の松明の明かりは昔と変わっておらず、空に瞬いている虹のような美しき星々でさえ色褪せてはいない。唯一変わった事といえば、こんな遅い時間に出歩いていても衛兵に呼び止められたりはしないという事であった。
貴族の館が集まる西地区から外れ、二人は商人らの店が集う南地区へと廻ってきた。大通りにゆらりと伸びる影はまるで大樹のようだ。三件目の宝飾店の路地を過ぎてさ
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