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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の4:弔い
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事ができたケイタク殿の......遺品です」

 そう言って、彼女は首にかけていたチェーン付の指輪を取り出した。王女は指輪の輝きと、アリッサの首元についた赤い鎖の跡に目を遣り、すっと立ち上がって彼女へと近づく。渦のように巻かれたチェーンをどかして指輪を取り、大事そうに持ちあげた。
 冷たい重みが掌から消えるのを機にアリッサは再び頭を垂れた。深く、気品ある絨毯に鼻を埋めんばかりに。コーデリアの声が優しく振り下ろされた。

「アリッサ....どうか顔を上げて」
「なりません。この不手際、騎士として恥ずべきものであるに留まらず、人としての欠落であります。この情けなき顔を殿下にお見せするわけには」
「顔を上げて」

 王女のたおやかな指がアリッサの頬を撫でて顎まで下ろされると、くいと掴んで無理矢理面を上げさせた。深緑の目から涙が毀れていた。

「泣かなくてもいいのに」
「ですが、私は殿下に期待に応えられず....」
「いいのよ。あなたは自分の責任を果たした。それを咎めるだなんて、私には出来ない」
「でもケイタクがっ」
「生きている。感じるの。召喚の誓いはまだ生きている。彼はこの大陸のどこかに必ず生きている」
「だったら姿を見せている筈....私が不甲斐ないから見捨てたんじゃ」
「どうしてそんな邪なことしか考えられないのですか。自嘲も大概になさい。私は誰かと違って、あなたを甘やかしてばかりじゃないのです」

 ついと顎から指を離すと王女はベッドに再び座り、ターコイズを指で弄ぶ。窓からの斜光を受けて水色の光が瞬く。静かな口調で彼女は続けた。

「私と彼は、『召喚の契約』を結んでいます。父とクマミ殿がしたように。二人は波乱に満ちた昔日において、戦場を幾度となく違えようと決して離れなかったといいます。
 この契りは、魂を結ぶ契りです。『セラム』に留まる事を受け入れる限り、決してその魂はこの大地から消えたりはしない」
「....そうだ、契約っ。殿下、クマミ殿を召喚したように彼を此処に呼ぶことはーーー」
「出来ません。期待に添えない解答となりますが、これも魔術の定めです。
 あなたが『風吹き村』の森で行った召喚は、召喚者が『セラム』、そして召喚される者が『異界』にいなければ行使できないものです。しかし契約はまだ生きているのです。糸で結びつけられた魂は、まだ『セラム』に留まっている」

 王女は更に、「たとえ世界を変えるような大魔術師でも」と言いながら騎士を見る。暗澹とした雲のような表情だ。近衛騎士が繕っていいものではない。
 彼女がこんな風に変わるとは思ってもみなかった。王女は一抹の失望を抱きながら続ける。

「魔術が奇跡を起こすとはいえないでしょう。アリッサ、あなたの思いは分かる。けれど堪えて。私達ができる事はこの王
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